仲川さんが「夜の本当の暗さ」と、「外気に包まれる心地よさ」を実感できたのは、テント泊を通して24時間、自然を満喫したからです。

 山を五感で感じて、自然を自分の中に取り込む。そうすることで、自分をリセットできます。

 建物で囲われた日常から離れて、自然に身を置く。自然の奥深さ、厳しさ、多様さに対峙するのがキャンプの醍醐味です。難度の高い山に挑戦しなくても、非日常の世界に飛び込まなくても、「日常」の中でも自然を享受できます。

自然に触れたときに
「スイッチ」がオンになる

 私たちは、「自然」=「山(森)などの遠い場所」にあると考えがちです。

 しかし、自然は「どこにでも」あります。コンクリートジャングルの中でさえ、自然は存在しています。

 以前、ビルの屋上でテント泊をしたことがありました。

 屋上には土も木もない。もちろん、ビルの屋上と山や森では、「自然」のレベルも違います。

 けれど、都会にも空があって、流れる雲もある。

 太陽の光を浴びることも、風の音を聞くことも、星空を眺めることもできます。

 都会に自然がないのではなく、私たちが気づいていないだけなのかもしれません。

 自然を感じるセンサーを働かせてみる。目を凝らし、耳を澄ましてみる。すると、日常生活の中にも、自然とのつながりを見出すことができるはずです。

 人間の体内には、心の虚しさを埋め、自分らしさを取り戻し、生きる力を育むための「体内スイッチ」が備わっているのではないでしょうか。

 自然を感じたとき、そのスイッチがオンになり、雑念がオフになり、心が解き放たれます。

 山に登らなくても、森に行かなくても、空を見上げ、流れる雲を目で追うだけで、自然と「体内スイッチ」をオンにできるのです。

深夜のキャンプで外気に包まれる心地よさを感じる自然の中に身を置く(同書より転載)