
キャンプには、日帰りハイキングでは味わえない「自然の静寂」がある。それは、現代人が忘れかけた「自分をリセットする時間」を思い出させてくれる。「自然に生きる」ことの意味を模索する登山家・辰野 勇氏が、キャンプという営みに込められた本質を語る。※本稿は、辰野 勇『自然に生きる 不要なものは何ひとつ持たない』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
山を五感で味わうことで
自分を“リセット”できる
日帰りのハイキングも楽しい。でも、太陽の照っている時間だけ山を歩くのでは、1日の半分以上を享受していません。
1日24時間、異なる表情を見せてくれる自然を満喫しませんか――。
湖面から湧き立つ朝霧。
モルゲンロート(朝焼け。朝日の出る前に山肌が赤く染まること)とアーベントロート(夕焼け。夕日が山肌を赤く染めること)。
流れ星の光跡。虫の音色がつくり出すシンシンとした夜の静寂…。
キャンプをすれば、ゴールデンタイムともいうべき朝夕や、夜の自然現象すべてを受け取ることができます。
『モンベル・アウトワード・コラム』(「BAYFM」のラジオ番組『ザ・フリントストーン』内のミニコーナー)でご一緒している仲川希良さん(モデル・フィールドナビゲーター)は、番組内で次のようにコメントされていました。
「はじめて山の中で泊まったときは、夜ってこんなに暗いんだ。ただそのことにすごく驚いた覚えがあります。キャンプをすれば、テントの幕1枚越しに自然の時間が流れているのを感じます」