インドアに生きてきた人間であっても、心の中にほんの少しはキャンプへの憧れを持っている。しかし、装備やノウハウを考えると及び腰になる人も多いだろう。未経験者ながら有能な引率者に恵まれた筆者(40代男性)の初キャンプは、果たしてどのような結果を迎えるのか。(フリーライター 武藤弘樹)
子どもの頃のトラウマ
トイレなしキャンプ
ここ最近、多くの人がキャンプに何かしらの憧憬を抱いている。日常からの解放、自然への回帰、利便性ある暮らしとの一時的な決別と生活の不自由さと闘う生命の喜び…。そこにあるのは己が“生きている”という実感であり、キャンプはそれを再確認させてくれるものである。
筆者のキャンプの思い出といえば、“他の利用者の痕跡”である。
今から30年も前になろうか、当時はキャンプ場にトイレなんぞなかった(あるいはそのキャンプ場がたまたまそうだったのであろうか)。用を足すにはテントを張った場所から少し森の方に分け入って行う。当時小学生だった筆者はそれがどうしても嫌で小用のみで我慢したが、他の利用者の痕跡がたまに見つかり、おそろしい気分で「本当にするんだ…」と思ったことばかりが鮮明に思い出される。
筆者のアウトドア体験といえば、他に子どもの頃、山小屋に泊まったことが1、2度ある程度であろうか。キャンプに限っていえばほぼ真っ更な状態に近い初心者である。
しかし、キャンプへの漠然な憧れは大人になってから胸にくすぶっていた。そこへキャンプの達人である妹一家が「一緒にどうか」と声をかけてくれたので、便乗して筆者世帯も赴くことになった。経験者が引率してくれるならこれほど心強いことはない。
四十路が初めてのキャンプをいかにして楽しんだか、ということを本稿では伝えていきたい所存である。