私自身は静岡出身ということもあり、ウナギをとても大事にしています。好物だからといってよく食べるということはせず、なんだか面白くない、気が晴れないなというときに、奮発してウナギを食べることにしています。すると、マイナスがプラスに転じるような気分になるのです。「ここぞというときのウナギ」に、私はよく助けられています。
もう1つ、私は20代の頃からサウナーでした。大学生の頃からサウナの回数券を買っていて、気分を整えるということを日常にしていました。風呂で整い、なおかつサウナで整って、気分が晴れる。当時はマッサージを受けるほどのお金はなかったのですが、マッサージまで受けられるようになると、さらに自分の体のストレスを減らすことができました。まず体からと考えると、対処法が楽になってくるものです。
仕事で受けたこわばりというものを解いていくために、体をほぐす方向性のものをルーティンとして入れていくのはとてもいいことだと思います。それは、緊張というものの度合いを自分で測っていくということにもなります。
自分らしさに帰って行ける
「心の地下室」を持つことの大切さ
新潮文庫から出ているドストエフスキーの小説『地下室の手記』の帯に、「心にいつも地下室を」ということを書いたことがあります。心に地下室、と言うとちょっと変な感じがするかもしれません。
この『地下室の手記』という小説の主人公はたいへん自意識が過剰で、世間のあらゆることに対して自意識が勝ってしまう状態です。地下室のようなところにこもって自意識がどんどんたまってしまうのですが、それ自体は危険な状態です。
けれどもその状態を上手につくると、世間と折り合いをつけて生活しながら、心の中には避難場所のようなものを持っておくことができるのです。つまり、うまくいかないことがあっても、周囲に何を言われても、その地下室的なところで自分らしさに帰って行けるということなのです。
そこが自分ひとりの孤独な場所だと寂しいと思うかもしれませんが、その部屋にはたとえば本があって、その本を読むことで著者や登場人物と共感できる。