【名医が解説】人間関係のストレスを増やす、一流アスリートが絶対口にしない言葉写真はイメージです Photo:PIXTA

「人間関係のストレス」は自律神経を乱す最大の原因だ。悩みを解決するためには、「他人を変えることはしょせん無理。なので自分が行動を変えよう」と自律神経研究の第一人者である著者は語る。参考にしたいのは、常に自身のパフォーマンスのことを考えて行動している一流アスリートたちだ。彼らが人付き合いで「絶対に言わない言葉」とは?本稿は、小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい:人生が大きく変わる自律神経のルール』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

自律神経を乱す
最大の要因は?

 人の悩みやストレスのほとんどは「人間関係がらみのこと」で占められています。また、そうした人間関係の悩みやストレスは、自律神経をかき乱す最大の要因にもなります。

 いったいどうして他人のことでそんなに悩まされてしまうのか。

 その理由は、「他人」はコントロールできないからです。自分のことはどうにかなっても、他人の言動はどうすることもできません。こちらからコントロールできなければ、思うようにいかないことが多くなるのも当たり前です。上司とそりが合わなかったり、部下が全然動いてくれなかったり、社内のつまらない対立で評価を下げてしまったり……。こうした「思うようにならない人間関係の悩み」を嫌気がさすほどたくさん抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 では、こうした人間関係の悩みとどうやって向き合っていけばいいのか。

 私は、「他人のことはしょせん変えることができないのだから、自分が行動を変えよう」と腹をくくって向き合っていくのが一番だと思います。自分のことであれば多少はコントロールが利くし、他人や周囲の状況に合わせて自分の接し方を変えていくことが可能です。あまりに合わせすぎるのもいけませんが、少なくともこちらから積極的に行動を変えていけば、他人や周囲との関係性に確実に変化をもたらしていくことができます。

 そして、人間関係をよくするために自分の行動を変える「小さな一手」として、「よい行い」をするのも私はアリだと思っています。ちなみに、私は、苦手な人と会わなくてはならないときや気が滅入るような会合に出なくてはならないとき、事前にごく小さな「善行」を積むように心がけています。

行動ルールを確立すれば
波風を立てずに過ごせる

 たとえば、ホテルのロビーで苦手な人と会うときは、事前に洗面所に行き、洗面台の濡れたところをちょっと拭ってからロビーへ向かうとか、あるいは、大学病院で緊張を強いられる会議があるときは、事前に病棟に行って入院患者さんと親しくコミュニケーションを取って状態を確認し、心をやわらかく解きほぐしてから会議に向かうとか……。

 ほんの些細な行動ではありますが、これをやっておくと、自律神経が落ち着いて、心なしか苦手な相手に対する自分の言動がまろやかになるような気がするのです。他人や周囲と波風を立てずにスムーズにつき合っていくには、こういう自分なりの「ちょっとした行動ルール」を持っているかいないかが、けっこう大きなカギを握っているのではないでしょうか。