
仕事や人間関係に疲れても、「ここに行けば自分を取り戻せる」という居場所があるかどうかで心の健康は変わる。石川啄木が詩に書き残した「逃げ場」や、昭和漫画『釣りバカ日誌』に描かれた主人公の姿は、そのことを私たちに示している。※本稿は、齋藤孝『折れない心は、言葉でつくる』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
「ストレスの正体」を
見極めることの重要さ
仕事では、ストレスを減らすことが最も効率を上げることになるというのが私の考えです。力が同じである場合、抱えている荷物が軽いほうが加速できます。
F=maで表されるニュートンの運動方程式では、Fが力で、mが質量、aが加速度を示しています。簡単にいうと、力が同じなら質量が小さくなれば加速するということです。
抱えている荷物というのは、ストレスにあたります。人間誰しも余計なストレスがない軽やかな状態であれば加速できるのですが、ストレスがあるとそれが重荷になってしまいます。ストレスという重い荷物を背負っていると、どれだけ力を出そうとしてもうまく加速することができません。
「トラブルは成長の機会になる」と言われることもありますが、苦難や逆境というのは、自分にとってのストレスが何であるかはっきりするという点でプラスになるものだと思います。何がストレスになっているかわからないと、対処のしようもなくてつらいばかりです。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という有名な句があります。幽霊ではないかと疑うと怖いのですが、正体がわかってこれは枯れたススキだったということがわかれば怖くありません。ですから、まずストレスの正体を見極めることが重要で、そのためにはトラブルや苦難は決して悪いものではないということです。