管理職の本質的な価値とは?
筆者は、管理職の本質的な価値は二つあると考えています。「機能価値」と「情緒(じょうちょ)価値」です。
機能価値とは、業務遂行に直結する知識やスキル、ノウハウのことです。具体的な仕事の進め方、使用するツールの操作方法、特定のタスクを効率的にこなすための技術的なアドバイスなどが挙げられます。この価値は、部下の能力を直接的に向上させ、生産性や業務の正確性を高めるために不可欠です。部下はこれらを通して、日々の業務をスムーズに進められるようになります。
情緒価値とは、部下の感情やモチベーションに働きかける心理的なサポートです。部下の努力を認め、成果を褒めること。失敗した際に共感し、安心感を与えること。成長を信じて期待を伝えることもそうです。上司が部下に対して自分の考えを共有する際に、組織の理念や行動指針を絡めて伝えられたらバッチリです。こうした上司をシェアリングリーダー(=想いを分かち合い周囲に良い影響を与える人)と呼びます。
こうした本質を理解し実行している上司のチームでは、部下が「この上司の下で頑張りたい」と意欲を持ち、心理的安全性を感じながら挑戦できるようになります。この価値は、部下の自己肯定感を高め、長期的な成長とエンゲージメントを育む上で欠かせないものです。部下同士の結束力も高まります。
機能価値は今後、どんどんAIに置き換わっていくことになります。機能価値を巡って人間とAIが競った場合、AIが勝つようになるでしょう。スキルやノウハウは目に見えて、数値化できるものだからです。
一方、情緒価値はどうでしょうか?冒頭で紹介した通り、すでにChatGPTを活用して褒めてもらったり、安心感を得たりしている若手社員はいます。ただし、こちらはまだ人間が勝つ余地がありそうです。なぜなら若手だって本音では、上司に褒めてもらいたいのです。
管理職が「人間性」を高めるために、できること
それでは、情緒価値の高い管理職になるには、どうしたらいいのでしょうか?人は本来、他人の気持ちを理解しようと努める生き物ですが、なかなか難しいものです。
なぜ難しいかというと、他人の気持ちを理解する前に、自分の気持ちを理解していないからです。この点が、過信している管理職がやりがちなミスです。人は、自分の気持ちを深く理解して、はじめて他人の気持ちを深く理解することができます。
それでは、中高年になっても「人間性」を高めるために、できることはなんでしょうか?それは、読書と内省です。古典や名著を読んで、何が心に残ったのか、なぜそう思ったのか、自己と対話しながら内省するのです。
さらには、ご自身のチームや部署で「読書会」を実施してみてください。本の感想を2分で話してもらう。それに対して、ほかのメンバーからも感想を募る。感想の中にしっかり自分の価値観や想いを込めてもらうことで、価値観の共有になりチームビルディングにもつながります。
シンプルですが非常にパワフルで、おすすめの方法です。名著や古典を読むことで、教養も高めることができます。ぜひ行動に移してみてはいかがでしょうか。