習近平の新規制による影響は?
安売り攻勢でシェア急拡大は困難か
さて、「納品後60日以内の決済」とする新規制施行後、インドネシアの自動車業界は今、どうなっているのか。現状、60日については、起点(検収日か納入日か)や支払い手段(現金か商業手形か)の曖昧さが残り、履行度にばらつきが生じている。
ただ、理屈から言えば支払短縮はディスカウントの原資を削るため、BYDが得意とする値下げ攻勢は沈静化する可能性が高い。BYDはタイで、工場稼働に合わせて大幅な安売りを仕掛けた。その値下げっぷりは、消費者団体から「前年とあまりにも価格が違う」と抗議されるほどだった。しかしインドネシアでも同様の攻勢を仕掛けられるかは怪しい。インドネシアでは販売鈍化と利益圧迫が同時進行する中で、在庫・販促の見直しが進むと見られる。
翻って日系企業の見方はどうか。インドネシアでは先月末、国会議員の住宅手当の引き上げへの抗議をきっかけにデモが拡大した。背景には経済成長の伸び率がやや鈍化しており、中間層~貧困層は不満を募らせている。「いまだに贅沢品と見られているEVがこれ以上、市場を広げるのは厳しいのではないか」(前出の日系企業幹部)との観測もある。
7月に開催されたインドネシア国際オートショーでは、BYDが新モデル「Atto 1ダイナミック」を1億9500万ルピア(約180万円)~で発表し「低価格」をアピールした。しかし、「トヨタをはじめ日本ブランドは新車価格が安いわりに再販価格は高い。まだまだ人気だね」(中古車販売業者)といった声は根強い。筆者が見る限り、EVの新車よりもガソリン車の中古車(状態の良いもの)のほうが、圧倒的に大衆に支持されている。

