他で言うと、古い工具なんかもそうですよ。ドイツ人とアメリカ人の、工具に対する考え方の違いが面白いんで、色々買い集めるようになりましたけど、それを並べてコレクションしてるわけじゃ無くて、100年前の工具だって普通に使ってますからね。
生活の中で100年前の物も活用している。で、毎日が充実しているわけなんですよね。
センスは一朝一夕ではなく
暮らしの中で磨くもの
編集部:一般的には、相当難しそうですが……。
所:そんな事ないよ。価値観って言われると難しく考えちゃうかもしれないね。でも、センスを磨けば、自ずからついてくるよ。
じゃ、庭とか公園にある雑草や、木の実をスケッチしてみ。誰でも出来るでしょ?そうすると、どうしても、遠近法とか、位置とか、タッチとか、良く見せようって、学校で習った方法で、修正しちゃうんですよ。
そうじゃなくて、フリーハンドで、描き切っちゃう。当然、その過程で、葉っぱがやたらでかくなったり、木の実の曲線がいびつになったり、変な絵になったとする。
そこで、ああ失敗しちゃった!って、やめちゃいけないの。失敗って、勝手に決めない!それは、周りの人から見て、失敗に見えるだけであって、失敗じゃない。失敗と思わずに、これはチャンス!ここから、自分の力でなんとかするのだ!って、描き続けて出来上がった絵は、自分のセンスだけで、出来たものなの。
なんでもそう。身の回りのものが壊れたら、直ぐに修理に出すとか、買い換えるとかしないで、自力でなんとかしてみよう!と、そういうのが大事。

編集部:自分の力で何とかしてみようと試みる姿勢が大切ということですね。でも、上手く行かない可能性の方が高いかもしれません。
所:かもね。でも、自分でやらないってのが、一番ダメ。センス無しになる。
実際の暮らしの中でさ、ネットとか他人の情報だけで、やりもしないのに、「それ知ってる」「やり方が間違ってる」なんて言ってるのは、もう、完全に落とし穴の中にいるんだよ。
失敗を恐れず、自分の感覚で、なんでもやってみることが、センスを磨くって事。
結果、こりゃ大失敗だな~って事はあるよ(笑)。私でも、洗濯機を修理しようとして、床を水浸しにしたり、バイクのプラグを、品番がちょっと違うけどいけるだろって交換して、調子悪くなったりとか……。そういうときは、無かった事に(笑)。それでいいんだよ。