八百長を証明することは難しい側面もあり、週刊誌サイドとしては痛恨の敗北である。裁判所側の判定によっては大きく負けることがある、というのが名誉毀損裁判なのだ。
高額賠償訴訟で惨敗すれば
大赤字への転落が確実
一方で取材がひどかったという例も存在する。
20年ほど前のある週刊誌報道で、某有名人が風俗店に通っていたという記事を週刊誌が書き、訴訟となり1000万円の賠償命令が出た。
この記事は業界では「完全なガセネタ。でっち上げ記事」と認識されており、賠償金額が高額化する流れを作ってしまった悪しき前例とされている。当然のごとく、記事を書いたとされる記者はその後業界から姿を消すことになった。
ちなみに、たとえ週刊文春が完売して2億円の売り上げがあったとしても、そのすべてが利益になるわけではないことは社会人なら常識として理解できるはずだ。
週刊誌の利益は、印刷代、紙代、配本費、人件費、取材コストなどを差っ引いて、せいぜい売り上げの5~10%といったところだろう。
近年はどの週刊誌も部数減に苦しんでおり、週刊文春も実質赤字だという説もある。2億円の売り上げで利益率が5~10%だと仮定すると、1000万~2000万円程度の利益となる。仮に裁判で惨敗し高額賠償となれば大赤字が確実となる。
高額賠償がありうるということは、どの週刊誌編集部も認識している。それが故に慎重に裏取りを重ね記事を出す。
名誉毀損裁判は記者にとっても避けたい事柄だ。日々の仕事をこなしながら、裁判のために陳述書を作成し、弁護士と会議をこなす。追加取材を行うというケースも少なくない。大きな負担がのしかかるのである。
週刊誌は「ウソを平気で書く」という風説にあらがうために、多くの記者が努力を重ねてスクープ記事を書き、長い時間をかけて信用を勝ち取るために闘ってきたという歴史がある。
ウソを書いて訴えられても賠償金が安いから「書き得」という主張は、言いがかりに近い。
東国原の語るような「書き得」論は、勇気を出して週刊誌に告発した人間を傷つける行為でもあり、私としても決して容認できない発言なのだ。