被害者の取材時間は膨大に使うのに、疑惑当事者に与えられる時間があまりに少ないというのがテレビコメンテーターの主張だ。
この指摘について、元週刊誌記者として解説したい。
松本の記事では、週刊文春は駅で直撃取材を行い、さらに質問状を送り、取材対象者に言い分を語る機会を提供している。一般的に週刊誌編集部から質問状が送られた場合、たいてい回答期限は「24~27時間」くらいで設定されており、同記事においてもおそらく同じくらいの回答期限が設定されていたと思われる。
週刊誌の疑惑当事者取材(業界的には「当て取材」という)がギリギリのタイミングで行われるのには3つの理由がある。
【時間の制約】週刊誌は疑惑については真実相当性を得られるまで時間をかけて取材を重ねるので、疑惑当事者への取材はどうしてもギリギリとなる。
【リアルな反応を見る】直撃(突撃)取材を行ったときにどのような反応を見せるかは、取材でも重要なポイントとなる。慌てるのか、ウソをつくのか、強弁するのか、はたまた怒るのか――。こうした反応は心証を左右する材料となる。
【猶予時間を与えすぎることの弊害】前述したように質問状の回答期限は多くの場合24~27時間程度に設定されることが多い。これは、時間の猶予を与えることにはデメリットしかないことが週刊誌は経験則でわかっているからだ。例えば、1週間の猶予があった場合、口止め工作や隠蔽工作、圧力工作を行う、あるいは疑惑の本人が姿をくらます、などのリスクが発生することが多い。
実際に当て取材後に疑惑の当事者からすぐ告発者やその周辺に連絡が行くということは週刊誌記者なら誰しもが経験している。多くの時間を与えることは告発者にとってもリスクとなるため、猶予時間は24~27時間程度がベストとされているのだ。
当て取材に踏み切るのは
99%の確証を持てたとき
週刊誌報道のセオリーとして、まず事実を固めてから相手の言い分を聞くという形を取る。