いないものとされていた黒人たちが
アメリカの理想を実現している
この1619プロジェクトの特集には、多くのアフリカ系のライターやコラムニストらが寄稿した。そのなかで、特集の中心をなすニコル・ハンナ=ジョーンズの論考に焦点を当てることで、このプロジェクトの主張の骨子を取り出してみよう。
1976年にアイオワ州のウォータールーで生まれたハンナ=ジョーンズは、人種差別をめぐる問題を報道してきたジャーナリストであり、『ザ・ニューヨーク・タイムズ』紙の記者だった。彼女はこの1619プロジェクトによって、2020年にピューリッツァー賞論説部門を獲得した。
ハンナ=ジョーンズの父親はアフリカ系、母親はチェコと英国にルーツをもつ白人である。オバマがそうであるように、黒人と白人の双方にルーツをもつ彼女は、アイデンティティの点で、みずからを黒人であると考えてきたと語っている。
みずからのルーツを辿ったハンナ=ジョーンズの論考は、より大きなルーツとしてのアメリカ史を遡っていく。
彼女はきわめて直截に、アメリカの建国が黒人たちをその理想の外部に留め置いて始められたこと、それにもかかわらずその偽りの理想を本物の理想へと変えてきたのは、その黒人たちであったことをつぎのように訴えている。
合衆国は、理想と嘘の両方によって基礎づけられている国である。1776年7月4日に署名されたわたしたちの独立宣言は、「万人は平等に創造されている」と宣言し、「不可侵の権利を自分たちの創造主によって与えられている」と宣言している。しかしこれらの文言を起草した白人男性たちは、自分たちのなかにいる数十万の黒人の人びとにとってもそれらがあてはまるとは思っていなかった。「生命、自由、および幸福の追求」はこの国のまるまる5分の1には適用されなかった。
だが、万人に約束された自由と正義が暴力的に否定されたにもかかわらず、黒人のアメリカ人たちは、アメリカの信条(the American creed)を熱烈に信じた。黒人たちの反抗と抵抗の数世紀をつうじて、わたしたちはこの国が、建国の諸々の理想をかなえるのを助けてきた。
しかもそれは私たち自身のために限らない。黒人の諸権利の闘争は、女性の権利、ゲイの権利、移民や障がい者の権利を含めた、あらゆる他の人びとの権利の闘争に道を開いてきた。
だが、万人に約束された自由と正義が暴力的に否定されたにもかかわらず、黒人のアメリカ人たちは、アメリカの信条(the American creed)を熱烈に信じた。黒人たちの反抗と抵抗の数世紀をつうじて、わたしたちはこの国が、建国の諸々の理想をかなえるのを助けてきた。
しかもそれは私たち自身のために限らない。黒人の諸権利の闘争は、女性の権利、ゲイの権利、移民や障がい者の権利を含めた、あらゆる他の人びとの権利の闘争に道を開いてきた。