イーロン・マスク氏イーロン・マスク氏 Photo:Joe Raedle/gettyimages

AIは人間の仕事を奪い、不平等を拡大させるのか、それとも技術で豊かさをもたらすのか?いま、テクノロジーへの考え方は、世界で2つに割れている。そんな中、アメリカのテック右派と呼ばれるテクノ=オプティミストたちは、テクノロジーの力を全肯定してきかない。彼らが掲げる「成長主義」の行く末は?※本稿は、井上弘貴『アメリカの新右翼:トランプを生み出した思想家たち』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

トランプ政権は多様性を排除し
テクノロジーの発展に全力を注ぐ

 2025年1月20日の就任式での就任演説のなかでトランプは、ジェンダーを生物学的な男女に限定し、政府におけるDEIプログラム(編集部注/多様な人材が公平に活躍できるよう組織を整備する取り組み)を廃止することを宣言した。

 その一方でトランプは、火星に宇宙飛行士を送り出すことで「マニフェスト・デスティニー(明白な天命)」を追求するとも語り、かねてから人類の火星移住を目標に掲げていたイーロン・マスクを小躍りさせた。

 19世紀の半ば、北米大陸を西へ西へと開拓していくことは、アメリカが神から与えられた使命なのだと言われた。アメリカ建国250年という節目の年を2026年に控えた今、トランプのアメリカは、宇宙への拡大を夢想しつつある。

 これにくわえて、トランプは、人工知能の開発に関する規制を盛り込んだバイデン前大統領による大統領令を撤回するという動きにも出ている。

 民主党政権の取り組みをことごとく覆したいというトランプの思惑はもちろんあるだろう。とはいえ、宇宙開発であれAIであれ、テクノロジーの制限なき発展に第2次トランプ政権が前向きなのは明らかである。