古代哲学者たちが真剣に対話する歴史的場面のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

今も昔も、他人から嫌なことをされて心を乱すのは人の常だ。だが、ソクラテスはいきなり平手打ちをくらっても、怒りをコントロールしていたという。その姿勢はストア哲学者たちに称賛され、侮辱に動じない心のあり方の手本となった。他人の言動に心を乱されないための、ストア哲学流アンガーマネジメント術とは?※本稿は、ウィリアム・B・アーヴァイン著、竹内和世訳『ストイシズム:何事にも動じない「無敵の心」のつくり方』(白揚社)の一部を抜粋・編集したものです。

侮辱してくる人を
放置してはいけない

 侮辱が私たちの心の平静をどれだけ乱すか。これを知るには、日常の暮らしのなかで心が乱される例を見ればよい。

 そのリストの上のほうにあるのは、他者、とくに友人、親族、家族、同僚たちからの侮辱である。ときにはその侮辱はあからさまだ――「おまえはばかだな」。

 だがもっとよくあるのは、それが陰険で間接的な場合である。彼らは私たちを物笑いの種にする――「帽子をかぶってくれないかな。君の頭のてっぺんがまぶしくてたまらないんだ」。

 あるいは私たちの成功を祝ったあとで、過去の失敗について思い出させる――それも嫌みったらしく何回もだ。皮肉な褒め言葉を投げつけることもある――「その服だと、太っているのが分からないね」。あるいはまた、私たちを当然のように無視したり、しかるべき敬意を払わなかったりする。他の人に向かって私たちのことを非難し、その人がまた私たちにそれを伝えたりする。

 そのままにしていたら、私たちの日常はめちゃめちゃになりかねない。