
プレゼンや大事な商談の前に不安や緊張で押しつぶされそうになる経験は、誰しもが持っていることだろう。そんな「本番に弱い」自分を克服するためにはどうしたらいいのだろうか。一流のアスリートも実践する「心の整え方」を、心理学者が科学的根拠とともに解説する。※本稿は、内藤誼人『くよくよしたら手を洗おう。』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。
メンタルを強くしたければ
「大谷翔平になりきれ」!?
催眠術にかけられた人が、重いものを軽々持ち上げたり、自分が別人になったかのように話し始めたりする映像を見たことはありませんか?暗示の力は、私たちが思っている以上に、心と体に大きな影響を与えるものです。
ロシアのモスクワ大学の心理学者、ヴィクトル・ライコフは、被験者に強い自己暗示をかけることで「芸術的才能を開花させることができるか」をテーマに、ユニークな実験を行いました。
ライコフは、普通の大学生に催眠術をかけ、「自分は16世紀の天才画家、ラファエロだ」という暗示を与えました。すると、その学生は催眠状態のなかでラファエロになりきり、目覚めたあとも驚くほど高いレベルの絵が描けるようになったのです。
同様の実験を楽器演奏でも行ったところ、やはり学生の演奏技術は飛躍的に向上しました。
この現象は「ライコフ効果」と呼ばれ、暗示によって一時的にでも「理想の自分」に近づく能力が引き出されることを示唆しています。