今回のプロジェクトが意味することは、AIの投資規模が大国にしかまかなえない規模に跳ね上がるということです。これが定着すれば、日本のようにそれをまかなうための電力インフラすら建設できない「数兆円の財源すらない国」は、持たざる国としてAIを輸入にたよらざるをえなくなります。

 当面、この巨大な計算能力は、AIのスケーリング(能力向上)に寄与します。直近ではマルチモーダルと呼ばれるテキスト、画像、動画、センサーなど異なる種類のデータを統合して処理するAI技術の開発が進みます。当面の課題とされる長文脈処理の面でもAIの能力は向上します。

 同時にオープンAIや他のAI企業が取り組むAGI(汎用型AI)の開発もこの巨大な計算能力で加速されます。

 当然ながらその後、AI、AGIの本格的な実用化が始まります。この段階では巨大なデータセンターインフラは学習よりも推論にそのエネルギーが費やされるでしょう。これがAIの「生産」の面で考えた未来です。

 そしてここが一番重要な点ですがAIの「消費」について彼らが考える未来はというと、AIの戦略資源化です。

 超知能と呼ばれるAIの時代がやってくると、わたしたちの世界はAIなしには動かなくなります。アメリカにとって重要なことは、そのAIが大国以外にはまかなえない巨大インフラが必要な希少資源になる未来です。

 そうなればデータセンターインフラは戦略資源となり、AIは輸出品目になります。石油や食糧と同じで、持たざる国は「産油国」「農業国」そして「産AI国家」から足りない資源を輸入せざるをえなくなる未来がやってきます。

 その覇者になるというのがアメリカの構想する未来であり、「今」がその踏み出すタイミングということです。

 ここで重要なことなので言及させていただきます。トランプ関税が決着した際、日本ではそう報道されていませんでしたが、一部のメディアは日本が投資する80兆円はスターゲートプロジェクトに投資される可能性があると報道されていました(日本経済新聞 7月24日)。

 これが今となっては根拠がないとも言えない状況になってきました。