“受験勉強漬け”ではない時間、付属校が与える余白の価値

 極端な話、「受験勉強というものが嫌で嫌で仕方がない。でも最低限大学には行きたい」というのであれば、それも付属校選択の一つの立派な目的だと私は考えます。ピアスを開けたい、髪を染めたい、そういう自由な校風を求めることも、その子にとっては重要な価値観です。

 翻って、大学受験をすることが前提になっている進学校の現状を見ると、最近は「尻叩き」が以前よりもはるかに激しくなっています。進学校では生徒全員が必死に頑張らされ、疲れ切ってしまう子も少なくありません。

 もちろん言葉の上ではグローバル教育や自分で考える力を重視するといった表現に変わってきていますが、実際に課題なり教材なりがあって、それを生徒にさせるという意味では、旧来の問題をたくさん解かせる勉強方法と本質的には変わっていないとも言えるかもしれません。

 加えて、多くの進学校では、生徒が中学1年生から大学受験のための塾にも通っているという現状に鑑みれば、進学校に行っても、学校以外に、課外でも勉強させられているということになります。

 これに対して、付属校には「モラトリアム」的な時間を過ごせるという大きな価値があります。今の日本がコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスばかりを重視する時代だからこそ、こうした貴重な時間を中学・高校・大学のどこかで確保することが極めて重要です。

 本を読んだり、好きなことに熱中したり、部活動や恋愛、留学など、夢中になれることに出会える時間を持つことができた方が、これからの複雑な時代を生きていく上で間違いなく有益です。

 さらには、6年間、さらに大学まで含めると10年間という長期間にわたって、早い時期から親密で深いコミュニティを形成できるのも付属校の大きな魅力の一つです。

 コミュニティを重視する価値観を持つ家庭にとっては、非常に価値のある選択肢と言えるでしょう。次回は気になる進学先について解説していきます。

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