『あんぱん』『おむすび』の主演女優に比べて
髙石あかりの知名度は低い

(1)朝ドラにいそうでいなかった? 主人公・髙石あかりのポテンシャル

『あんぱん』の今田美桜や、その前作『おむすび』の橋本環奈に比べると、今回の主人公を演じる髙石あかりの知名度はまだ低い。しかしコアな人気を持ち、そのファンからは絶大な支持があるのが彼女である。

 その評価を上げたのはなんといっても映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで、2021年公開の第1作が好評だったことからこれまでにシーズン3まで公開され、昨年はテレビ東京で連続ドラマにもなった。

 髙石が演じるのは女子高生殺し屋コンビの1人で、もう1人を演じる伊澤彩織とともに、アクションやたたずまいが絶賛された。殺し屋としての仕事を的確にこなす一方で、年齢相応の憎めない面もあり、とにかく2人のキャラが確立していて、「このコンビをずっと見ていたい」と思わせる力があった。これが2人とも映画初主演だったというから驚きだ。要するに、大変な当たり役だったのだ。

 当たり役といえば、17歳で演じた舞台『鬼滅の刃』ヒロインの竃門禰豆子役もそうだろう。禰豆子は主人公・炭治郎の妹だが、鬼になったためにいつも竹製の口枷をくわえている。

 悲劇的な宿命を背負ったこのキャラクターに、色白で憂いのある瞳、どこかミステリアスな雰囲気のある高石がドンピシャにハマった。本人は当時のインタビューで、人生で一番うれしかったのは禰豆子役に選ばれたことと答えている。

 俳優は演技の実力が求められるのはもちろんのこと、タイミング良く役をつかみ取る運も必要だ。次々と当たり役に恵まれるのは、本人の実力はもちろん、役を引き寄せる強運も持っているからだろう。

 朝ドラ主演の座は、2892人の応募者の中からオーディションで勝ち取った。この応募者数は歴代3番目となる数だという。その引きの強さを、朝ドラでもいかんなく発揮してくれるのではないかと楽しみだ。