当初、この在留資格は、外国人による日本での起業を促し、経済の活性化と技術・サービスの多様化につなげることを目的としていた。しかし、諸外国の同様のビザを取るのに必要な資本金と比べ、日本は遥かに安い設定であった。
そして、このビザのもう一つ大きな特徴は、家族帯同が可能な点である。日本に移住すれば、日本人と同等の医療や教育を受けることができ、さらには一定年数が経過すると、「永住権(グリーンカード)」や日本国籍の申請も可能となる。
こうした条件が、近年の中国国内経済の悪化や社会環境の変化で海外へ脱出する動きが活発化している状況と合致した。事実上の“移民の抜け道”として制度を悪用するケースが続出したため、制度改正に至ったのだろうという推測が成り立つ。
行政書士と在日中国人の生の声は?
では、この「改正案」が実際に施行されると、該当する在日中国人にどのような影響を与えるのか。先日、経営・管理ビザで来日している、複数の中国人の知人や行政書士らに話を聞く機会があった。
ある行政書士は次のように述べた。
「日本は『経営・管理ビザ』に対して大きな誤解がある。偏見と差別があるといっても過言ではない。しかし、これも無理はないと思う。なぜなら、一見すると、500万円で日本に移住でき、日本の社会保障制度を享受できるように見えるからだ。しかし、実際には500万円は単なる頭金に過ぎず、いざ来日して会社を設立すると、オフィスの賃料や厚生年金、健康保険料、その上住居費と生活費など、年間最低でも700万~800万円はかかる。そうでなければ次回の在留資格更新ができないからだ。確かに一部、書類を偽装したり架空の会社を設立したりする人もいたが、そういう行為はいずれ発覚するし、在留資格を取り消されるなどリスクが高い」
また、経営・管理ビザで来日して1年半になる40代の男性は、現在の心境を明かした。
「わが一部の同胞による制度悪用行為は否定できない。悪い事例が出れば、どうしてもマスコミは大きく報道するし、悪い例ほど目立ってしまう。結果として、『この資格の保有者は、皆、悪いことをしている』と思われがちだ。しかし、大多数の在日中国人は、真面目にコツコツとビジネスを行っていることを知ってほしいというのが正直な心情だ」