めちゃ高いけど…元取れるの?「小学校に100年通える」600円の高額ウサギで一獲千金ねらう父〈ばけばけ第3回〉『ばけばけ』第3回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第3回(2025年10月1日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

当時の600円で小学校に100年通える

 ぴょーん。

 松野家にウサギが来た。
 
 司之介(岡部たかし)はウサギビジネスをはじめることにした。

 ビジネスパートナーは金成初右衛門(田中穂先)。「金で成り上がったはじめての右衛門」というかなりわかりやすい名前で、帽子の高さも富裕層感、上流階級感を醸している。山高帽よりも高さのあるシルクハット(トップハット)を金成はかぶっている。

 シルクハットとウサギ。まるで『不思議の国のアリス』のようだ。

 ウサギは商売になるのか。この時代、いろいろな種類のウサギが流行になっていた。犬や猫や小鳥や金魚ではなくウサギ。紳士たちが、いろいろな種類のウサギを抱いて写真に収まっている。

 1匹5円のウサギがバブルで600円。トキ(福地美晴)が通う小学校の月謝・2カ月1円と比べると、ウサギ1羽で小学校に100年通える計算だと、たまげるフミ(池脇千鶴)。

 これまで朝ドラで金額が出たとき、週刊朝日の『値段史年表』を参照してきたが、ドラマのなかでわかりやすく、かつユーモアのあるセリフで表現することが最近減っていたなあと、ありがたく感じた。これをやるのは調べたうえで、セリフとして考えるひと手間もふた手間もかかるので、省いてしまいがちなのだろうと思う。

 今回、取材としてクレジットされているスタッフがいる。川野秀昭は『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』や『青天を衝け』などの演出もつとめ、『ばけばけ』ではプロデューサーとして参加している。『虎に翼』にもNHKの解説委員が取材スタッフに入っていて、事実関係が充実していた。取材スタッフがいることで目配りのある脚本が生まれているのではないだろうか。

「昔から人を見る目は確か」と自信満々の司之介。でも主題歌が「日に日に世界が悪くなる♪」だから不安しかない。