
トキ、キレる。「じゃがじゃがじゃがじゃがうるさいな!」
この中州、引きの画だとずいぶん遠くにあるように見えるが、川岸のどこかから繋がっているようで、トキがそばまでやってくる。島根の地図を見ると、大橋川は湖に繋がっている。おそらくこの中州は湖であろう。司之介は川沿いを歩いて湖に出て中州にひっそり隠れていたのだろう。
司之介は水のなかに入って逃げる。トキも追いかけて水の中へ。
朝ドラあるあるに、ヒロインは水(川や海)に落ちるというものがあるのだが、お父さんが先に水の中に入ってしまった。そのうえ、トキとごちゃごちゃあって、トキが司之介を突き倒す形に。お父さんが水にハマってしまう珍しいケースとなった。
これまで殊勝な娘であったトキがここで豹変。
「じゃがじゃがじゃがじゃがうるさいな!」
トキは、お父さんがいないと「しじみ汁がおいしくない」と言う。やっぱり、「あー」「あー」としじみ汁を飲んでいたときのため息が、いつもの「あー」ではなかったのはそのせいだ。
そこへフミまでやってきて「おいしくない」と援護射撃をする。
問答無用でじーんっとなるシーンである。
帰ろうと父の手を引っ張っていくトキ。
司之介「一家4人で楽しく暮らせればそれで良いか」
トキ「うん」
司之介「良き娘に育ってくれた」
このまま親子3人で手でも繋いで帰っていけばしみじみいいシーンだが、感動のままでは終わらなかった。
「では働いてくれるな明日から」と司之介は言う。ああ、司之介もやっぱり娘を働かせるのか。
トキが「学校が」と戸惑うと、司之介は無情にも「ない」。
司之介のウサギビジネスがはじけて、ウサギ相場が大暴落、一生働いても返せない借金長者になってしまったのだ。
第3回です巻きにされて橋の向こうに連れていかれたのはやはり金成初右衛門(田中穂先)だったのだ。とすれば、司之介もす巻きにされちゃう???
「借金長者」とは、たくさんの借金過ぎて抱えきれないから長者という言葉で語感だけでもよくしたいという涙ぐましさがある。
ショックでおトキは気を失ってしまう。
感動譚では終わらない。どうやらややブラックなところがあるのが『ばけばけ』の特性らしい。
『虎に翼』のエリート銀行員よりも、こういう悪びれないおかしみのある役が、岡部たかしにはとても似合っている。でも、司之介も上級武士の家の長男だからエリートではあるのだと思うが。
ブラック展開はこれで終わりではない。さらに……。