なぜ日本のコンテンツ産業は国際競争力が高いのか
ソニーがディズニーを超えるためには、わが国のコンテンツ産業の成長も重要だろう。『鬼滅の刃』のヒットに見られるように、ソニーにとって国内のクリエーターが持つ、容易に模倣できない作風は競争力の源泉になっている。
こうしたコンテンツ創出力こそ、日本の優位性の一つだ。3月に経済産業省が公表した『エンタメ・クリエイティブ産業戦略中間とりまとめ案』からは、国際的な競争力の高さが確認できる。
11~23年でコンテンツの輸出は1.5兆円から5.8兆円に拡大した。ちなみに同期間の自動車の輸出は11.5兆円から21.6兆円に増えた。10~22年では、国内コンテンツ産業の海外収入の成長率は、アニメが年率14%、ゲームが同16%、映画などの映像分野が同20%を超えている。
この間、欧州の財政危機、IT先端分野を中心とする米中対立の深刻化、コロナショックによる世界経済の混乱、そして21年春以降は急激なインフレと世界経済への逆風は強かった。
映画やゲーム、マンガなどは成長率が高いだけでなく、景気の変動の影響を受けにくい特徴がある。わが国にとって比較的、安定した需要の拡大が見込める成長分野だ。ファッション、アート、そして“聖地巡礼”を目的とした訪日外国人(インバウンド)の増加という波及効果も期待できる。
そうした成長を支えるのが、わが国のコンテンツ・クリエーターの職人技だ。『鬼滅の刃』が世界でヒットした理由の一つに、ストーリーが明快で分かりやすいことが挙げられるだろう。刀剣で戦うストーリーや、日本の原風景の描写も外国人からの人気が高い。ソニーの最先端の画像処理技術を結合することで、美しい映像で、没入感の高い映像に仕上げられている。
ソニーは、国内のクリエーターとの関係を強化することで、一段と高みを目指せるはずだ。ソニーの成長余地が大きいことが、ディズニーとの株価パフォーマンスの差に影響したと考えられる。