ジャニーズ問題でつまびらかになった、日本のエンターテインメント業界のあしき構造。有力な芸能事務所の影響力が強大化したのは、なぜだろうか。背景を探ると、ある協定の存在にたどり着いた。一方、Kポップの成長が目覚ましい韓国でも、芸能人と事務所との不公平な関係の是正に向けた取り組みが進んでいる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
芸能事務所とテレビ局と広告代理店の
構造問題を改めないと問題解決にならない
9月、ジャニーズ事務所は創業者による性加害を初めて認め、謝罪会見を開いた。一つのきっかけになったのは、2023年3月に英国放送協会(BBC)が放送したドキュメンタリー番組だったようだ。番組で被害者の一人は、「(故ジャニー喜多川氏からの性加害を)我慢しないと(芸能界で)売れない」と周囲から説かれたと告白している。この発言の真意は、芸能事務所の力があまりに強大であることを物語っている。
それは、わが国エンターテインメント業界のあしき構造問題といえる。ジャニーズ事務所に限らず、有力な芸能事務所は、タレントの需要者であるテレビ局や広告代理店とも強固な関係を築き上げることでその力を強めてきた。そうした事務所に所属する芸能人が、事務所トップの意向に従わざるを得ないケースがあることは容易に想像できる。しかしそれは、米欧のエンターテインメント業界とは大きく異なる。
ジャニーズ事務所では常識と良識では考えられない感覚を持つ人物がトップの座に長く君臨し、組織を思うままに動かしていたようだ。人気タレントを使って視聴率を伸ばすため、テレビ局も事態を黙認せざるを得なかったとみられる。そうした業界の構造、芸能事務所に強大な力が集中する状態を改めない限り、根本的な問題解決にはならないはずだ。