基本属性を統制して男女賃金格差を算出し比較するという方法は、学術的には確立されたアプローチであり、今後、各企業が同様の方法を自発的に取ることが求められるようになるだろう。
古い体質の日本企業ほど
格差が深く根付いている
ちなみに、明治大学の原ひろみ教授が、賃金構造基本統計調査を用いて、日本全体で人的資本と関連した属性で説明できる男女賃金格差と説明できない賃金格差がどの程度あるか推計を行っている(注1)。
それによると、経済全体での説明できない男女賃金格差は14.8%で、観察される賃金格差(27.3%)の半分以上である。
『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄、日経BP)
また、日本の男女賃金格差は組織内の格差が大きいことが特徴であると先に述べたが、説明できない格差においても、同一事業所で発生している格差は12.1%とその大部分を占めることを原教授の推計は示している。
この数値は回帰分析(編集部注/色々な条件のうち「この条件だけが変わったら、結果がどう変化するかを一次方程式で確かめる統計学の手法)を用いた男女賃金格差を計算する企業にとって、1つの目安を提示してくれる。
回帰分析で年齢、勤続年数、学歴を統制して計算した男女賃金格差が、12.1%を上回るのであれば日本の平均より大きく、下回るのであれば日本の平均を下回ることになる。
社歴の長い伝統的な日本企業のほとんどがこの水準を上回るはずなのである。
注1 原ひろみ(2023)「男女の賃金情報開示施策:女性活躍推進法に基づく男女の賃金差異の算出・公表に関する論点整理」RIETI Policy Discussion Paper Series 23-P-009.







