男女間の賃金格差を開示することが義務付けられた写真はイメージです Photo:PIXTA

2022年7月、女性活躍推進法の改正にともなって、常時雇用労働者が301人以上いる企業は、男女間の賃金格差を開示することが義務付けられた。ところが、人事制度に詳しい研究者によれば、公表されたデータは必ずしも実態を表してはいないという。社外はもちろん、社内の意思決定者すらまどわせかねない数字のマジックを読み解く。※本稿は、大湾秀雄『男女賃金格差の経済学』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

男女賃金格差の大きさは
業界ごとで大きく異なる

「女性の活躍推進企業データベース」に蓄積されている企業が開示した男女賃金差異の業種別の分布を見てみよう。

 マーサージャパンの集計によると、正規雇用者の中で男性の平均賃金を100とした時に、女性の平均賃金が74.4の水準であり、女性の賃金が平均して25.6%低いことを示している。

 業種別に見ると、保険、銀行、証券といった金融業界の賃金差が特に大きく、不動産、建設関連がそれに続く。他方、賃金差が小さいのが、福祉、公務員であり、この2業種を除くと、男女格差が20%を下回る業種はない。

 25.6%の賃金格差でも大きいと言えるが、実態はより大きいと見るべきである。なぜなら、この数字には非正規雇用が含まれていない。

 2023年7月時点の同じく「女性の活躍推進企業データベース」を使った日本経済新聞社の集計では、非正規を含む男女賃金差が平均70つまり女性の賃金が男性よりも30%低いというと結果になっていた。