欧米と東アジアで
決定的に違う結婚観
PACSはもともと同性カップルの結婚的制度を整備する目的で導入されたが、「従来の結婚よりライトだが複数の法の保護は受けられる使いやすい制度」として異性カップルの間でも注目されはじめ、若い世代を中心に結婚よりPACSが選ばれることが増えてきた。手元に2018年までのデータしかなくて申し訳ないのだが、結婚が53%に対してPACSは47%だから、かなり近づいてきている。
この方面では特にフランスが進歩的だが、非婚(事実婚含む。つまり、正式な「結婚」をしていない状態)での出産率はヨーロッパ全体で高い。フランスは60%弱で、EU全体では40%超、一番高いアイスランドが70%で、10%を下回るのはキプロスのみである(2016年)。
一方日本や韓国、中国の東アジアは非婚出産率がぐっと低い。日本では約2%とされ、韓国は2025年に1.1ポイント上昇して5.8%、国内統計史上最高値となったそうである。「結婚」は必ずしも「出産・子育て」ではないが、「出産・子育て」は「結婚」と強く結びついて捉えられているのが東アジアである。
これには個を重んじる欧米に対して、家や和(集団)を重んじる東アジアの価値観が大きく関係していよう。韓国や(実生活レベルでの)中国は儒教的価値観が強く、日本も共通するところはありつつ、「永遠の愛を誓いますか?」的なキリスト教寄り演出の結婚式が、カップルたちの結婚観をキリスト教寄りに若干引っ張っているところもあるように感じる(韓国はキリスト教徒が多いが結婚観はバチバチ儒教寄りである)。
ちなみにフランスを指して「進歩的」とは言ったが、東アジアと欧米でどっちがいいとかどっちが進んでいるという話ではない。どちらにもそれぞれのイデオロギーがある。仮に日本で今のPACSのようなオルタナ結婚が主流になるとするなら、それはだいぶ先の事になるのではないかという気はする。