結婚制度を前提にしていない
「ポリアモリー」

 社会的な受容度に関しては、反発を招きやすいオープンマリッジに比するとポリアモリーは緩やかである。その理由は認知度が低いからというのはあるにしても、実は両者がしのぎを削っている土俵がそもそも若干違う。

 「オープンマリッジ」や「セカンドパートナー」は従来の結婚制度を前提に作られている言葉である。オープンな「結婚」、「2人目のパートナー(言外に1人目を示唆)」という具合。

 一方ポリアモリーは結婚制度は関係なく、むしろそこ(制度がもたらす束縛)から自由になろうとする考え方である。成り立ちが違うから両者が用いられる主な場も違っていて、従来の結婚観派からの風当たりは、2つ比べるとポリアモリーの方がやわらかに見える、ということである。

 なおこのポリアモリーは海外でちらほら研究されていて、メリット・デメリットが箇条書きで挙げられるくらいには整理されている。

 メリット→自由、複数のパートナーから多様なニーズの充足、パートナーとの信頼関係の新地平(すべてをつまびらかにすることにより築かれる信頼)、1人に依存するリスクからの脱却。

 デメリット→嫉妬・比較を突き付けられる感覚、劣等感の想起、複数人と関係を維持するための実務的労力の増大、社会から理解を得られにくい、孤立、カップルの一方がポリアモリーだった場合、非ポリアモリーのもう一方は不満を溜めやすい。

 また、ポリアモリーのカップルに子どもがいる場合の研究もあって、子どもにとってのメリットは「両親に限らず、複数人の大人からサポートが受けられる」、デメリットは「友達などに親のあり方を説明しづらい」「親カップルの不安定さが子にダイレクトで影響する」などである。

 こうした結婚後の自由恋愛をベースに置くものだけがオルタナティブ結婚ではない。むしろ結婚観の変遷を読み解くうえでの大きな潮流は、フランスのPACSなどに見られるオルタナ結婚・準結婚的な制度である。日本の価値観でたとえていうと「同棲以上・結婚未満」といったところであろうか。