試行錯誤の重要性
最後に強調したいのは、最初から完璧な指示を出そうとする必要はないということだ。AIとの対話はキャッチボールのようなもの。ChatGPTの「chat」はチャット、すなわち雑談や会話である。最初の指示で期待通りの回答が得られなくても、会話のキャッチボールを繰り返すことで、徐々に自分の求めるものがはっきりしてくるはずだ。
幸いなことに、あなたがしつこく食い下がって何度回答を求めたとしてもAIはイヤな顔ひとつしない。そんなときに入力すべき言葉は、次のようなものだ。
「もう少し詳しく説明して」
「別の観点から考えてみて」
「○○の情報を追加して、もう一度お願い」
このような言葉を投げかけ、対話を通じてAIの回答を修正・改善していけばいい。むしろ、この試行錯誤のプロセスこそがAIを使いこなすうえで非常に重要であり、AIとの協働の醍醐味だと言える。
プロンプトの出し方にはさまざまな意見がある。会話(チャット)をしながら少しずつ回答を仕上げる方法がいいか、あるいはできる限りすべての情報を最初に与えた方がいいのか。個人的には、まず自分が求める生成のイメージや、背景の情報等を最初にできる限りプロンプトとして与えた方がいいように思う。それでまずまずの生成結果が出ればいいし、そこから微修正していってもいい。むやみに会話を長くすると、修正のはずが会話が明後日の方向に行ってしまうことも珍しくない。
最初にこちらから出す情報が少ないと、意に沿わない結果が出た場合に会話で修正するのは案外骨が折れるし、結局は満足のいく回答が得られず、最初からやり直した方がいい場合も少なくない。会話でイメージが絞れてきたら一度会話を打ち切って、しっかり情報や成果イメージを盛り込んだプロンプトでやり直すのが効率的なことも多い。
AIへの指示の技術は、いいプロンプトのポイントを意識して日々繰り返せば必ず上達するし、出力のクオリティも上がっていく。ここで紹介したポイントが、日々の業務でAIのポテンシャルを最大限に引き出すヒントになるはずだ。