ChatGPTがローンチされてから丸2年が経った。生成AIブームはいったん過ぎ去ったようにも思えるが、実は仕事上の文書作成やアイデア出しに活用している人は多いという。
そこで今回は、2024年上半期・2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となり、「もっと早く読んでいればと後悔すらした」「ぶっ刺さりすぎて声出た」と反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんと、『「言葉にできる」は武器になる。』の著者・梅田悟司さんに、生成AIを使いこなせる人とそうでない人の「決定的な差」について語っていただいた。(構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)
生成AIも「完璧な答え」を一発で出せるわけではない
安達裕哉(以下、安達) 生成AIを使って、商品やサービスのキャッチコピーをつけようとしている人はたくさんいると思いますが、実際にやってみると「微妙なアウトプット」しか出てこないことが多いです。
梅田悟司(以下、梅田) 入力文をつなげただけの「説明的な文章」になってしまうケースは多々ありますよね。
安達 もちろん、生成AIはキャッチコピーの作り方を学んでいるはずですが、なぜうまく書けないのでしょうか?
梅田 コピーライターも、いきなりキャッチコピーを考えるわけではありません。考える順番があるのです。人間がいいコピーを生み出すときのプロセスに、その答えがありそうです。
上司が部下にコピーづくりを指示した場合、どんなやりとりがあると思いますか?
安達 たとえば、部下のコピー案が凡庸だったら、上司は「ひねりが足りないからやり直して」「この言葉をもっとキャッチーにして」などとダメ出しするでしょうね。
梅田 まさに、かつて僕がよく言われたセリフです(笑)。出力されたキャッチコピーを修正していく段階で必要なのは、「明確なフィードバック」です。生成AIに対しても、同じようなセリフをプロンプトとして投げかけてあげるといいと思います。
安達 部下に延々とやり直しをさせたら「パワハラだ」と言われそうですが、生成AIに対してなら、何回指示を出しても文句を言わないので楽ですね(笑)。
生成AIを使うときの「大前提」
安達 ほかに、生成AIを使ってコピーをつくるときのコツはありますか?
梅田 大前提として、マーケティングで重要なのは、ユーザーの理解です。想定しているユーザーが「どんな人たちか」「その人たちのニーズは何か」などをきちんと設定するべきです。これらを決めずに、語感の調整だけを頑張っても、刺さる言葉は生まれません。
安達 やはり、現実のマーケティングと同じプロセスを経るべきだということですね。コピーづくりにかぎらず、生成AIを利用するときには「最終的に何を目指すか」を予め明確にしておかないと、ゴールの見えない不毛なやりとりに終始してしまうんだと思います。
梅田 その通りですね。たとえば、新商品のキャッチコピーをつくるとしたら、商品情報を入力したうえで「商品のユーザーのペルソナを5種類出してください。その際、普段は対象にならない人たちも含めてください」と指示を出します。
安達 なるほど、ターゲットを広く考えるんですね。こういう指示を出す際の注意事項はありますか?
梅田 人間に対する依頼と同じで、できるだけ誤解が生まれにくいコミュニケーションを心がけたいですね。そのため「これ・それ・あれ」といった抽象的な指示は使わない方がいいでしょう。
使いこなせるかどうかは「コミュ力」しだい
梅田 あとは、生成AIは「否定語に弱い」という特性があります。「○○という言葉は使わないでください」「○○はしないでください」という指示は、実は複雑なんです。
そのため、まずは生成AIに明確な役割を設定したうえで、多くの制約を設けずに出力させる。だいたい30パターンくらいでしょうか。その中から使えそうなものを選んで、磨いていくのがいいかもしれません。
候補を絞っていく過程で、外してほしい単語があれば指示する形で問題ありません。
安達 これはまさに「ブレインストーミング」の仕組みと同じですね。生成AIも人間も、まずは色々な前提を抜きにして自由に思考するからこそ、ダイヤの原石のようなアイデアが出てくるんだなと腹落ちしました。
結局のところ、対人のコミュニケーションと同じような配慮を生成AIに対してできるかが、「上手に使いこなせるか」「全然使いこなせないか」の分かれ目になるんだと思います。
(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏の対談記事です)
Books&Apps運営、企業コンサルティング
Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。著書に、2024年上半期・2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となった『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)など。