意見を否定されない、ミスを罰せられない…
心理的安全性を高める

 温泉地でのオフサイトミーティングを実際に導入した企業からは、「普段発言の少ないメンバーが意見を出すようになった」「部署を超えた横のつながりが強化された」「次の日から会議の空気が変わった」といった声が多く聞かれます。これは温泉という環境が心身をリラックスさせるだけでなく、「心理的安全性」を自然に高める作用を持っているからです。

 心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、チームの中で「自分の意見を言っても否定されない」「ミスをしても罰せられない」と感じられる状態を指します。温泉という非日常のリラックスした空間では、この心理的安全性が高まりやすくなり、メンバーが互いに本音を語り合うきっかけになるのです。

 また、温泉地での「共体験」は、組織に長期的な効果をもたらします。人間は感情を伴う体験を記憶に強く刻み込みやすいと言われています。つまり、温泉に浸かりながら語り合った時間や、地域の名物料理を一緒に味わった体験は、会議室での議論よりも深く心に残るのです。これらの体験は帰社後も社員同士の関係性を支え、プロジェクト推進や新しい挑戦へのモチベーションに繋がります。

 温泉地オフサイトのもう一つの価値は、世代や役職の垣根を超える「橋渡し効果」です。オンライン中心の働き方では、今まで以上に、若手社員が上司や経営層と直接コミュニケーションを取る機会が減る傾向にあります。しかし、温泉で肩を並べ、同じ料理を味わい、同じ部屋で語り合うことで、形式的な上下関係を超えた信頼関係が築かれやすくなります。

 例えば、新入社員が露天風呂で先輩や上司からキャリアの話を気軽に聞けることは、日常の職場では得られない経験です。逆に、管理職にとっても本音ベースの若手社員の価値観や考え方に触れる機会となり、世代間ギャップの解消に役立ちます。こうした双方向の学びは、企業全体の柔軟性を高め、変化の激しいビジネス環境に対応する力を強化します。