私たちは無意識のうちに、できるかぎりコンフォートゾーンにとどまろうとします。
しかし、そうした安心感のある空間にとどまることが、じつは最大のリスクになります。
なぜなら、変化が避けられない現代において、「慣れた環境のままでいられる保証」はどこにもないからです。
この空間の「外」にいかに踏み出せるかが、学びのカギになるのです。
他方で、いちばん外側にある「パニックゾーン(混乱空間)」、すなわち、未知のものが多すぎたり、変化が激しすぎたりする領域に踏み出すことはおすすめできません。
ここでは、あまりにもストレスや負荷が大きく、学ぶ余裕がなくなってしまうからです。
「逆境する」学びができる人は、この2つの中間にある「ストレッチゾーン(背伸び空間)」にうまく踏み出しています。
「ストレッチ」という言葉の示すとおり、この空間では学ぶ人に「失敗」や「挫折」のリスクが生まれると同時に、「挑戦」や「背伸び」も求められるようになります。
「挑戦」や「失敗」があるということは、裏を返せばそこには「学び」があるということ。
ですので、この空間は、別名「グロースゾーン(Growth Zone 成長空間)」「ラーニングゾーン(Learning Zone 学習空間)」とも呼ばれています。
業界のトレンドが変化する、職場の組織体制が変わる、新しいテクノロジーが導入されるなど、私たちはつねに変化にさらされています。
こうした環境変化が起きたとき、ストレッチゾーンで学び続けている人は、新しい状況に適応しやすく、成長のチャンスをつかめます。
逆に、コンフォートゾーンばかりで過ごしていた人は、学ぶ機会を逃してしまい、いざ変化が訪れたときにうまく対応できなくなってしまうのです。
ミドル層ほど逆境が必要!?
現状維持バイアスを打破しよう
じつのところ、私たちの調査データにおいては、よりよい学びに最も大きな影響を与えていたのが、この「逆境する」でした。
つまり、失敗や困難から学べるかどうかが、望ましい学びにたどり着くうえでの最重要ポイントになるということです。
とくに、いわゆるミドル層の人(35~59歳)にとっては、「逆境する」の重要度がさらに高まることが分析からわかっています。