この政策の場合、政府にとっては税収が減りますから、景気を刺激できなくなるのではという不安が本来は発生します。ところが高市候補は経済成長を基盤として、財政出動を容認するとも主張します。そのつじつまがどこで合うかというと、赤字国債は「やむを得ない」場合に容認するということです。

 個人的な私の意見とは反対ですが、経済理論的には間違っていません。これをやると決めてやり切れれば、国民の生活はよくなるでしょう。

 採点ですが効果についての信頼性は高いと評価します。問題は実行面で、少数与党自民党の中で抵抗勢力の力に押し切られて何もできない危惧を感じます。全体評価は85点とさせてください。

高市氏と茂木氏の政策
林氏と小林氏の政策比較
小泉氏の政策ダイヤモンド・ライフ編集部作成

財政規律重視はOKだが…
厳しめ採点の林候補

 3番目に林候補を取り上げます。実質賃金1%程度の上昇を定着させることが物価高に対する政策の骨子です。春闘を通じたベースアップ引き上げを後押しすることでこれを実現したいと主張しています。減税には慎重で、小泉候補や高市候補とは違い大規模な財政出動に対しても慎重な立場です。

 評価すべき点としては、企業収益が拡大してそこで労働分配率が上がれば経済が好循環に向かうという考え方が賢者の考え方だという点でしょう。いたずらに何か新しいことをやるのではなく、今起きている社会の流れをうまく利用しようという考えだと言い換えてもいいと思います。

 林候補にとって追い風なのは、労働市場の需給環境がミクロで逆転し始めていることです。これまで安価な労働力として利用できた非正規労働者が絶対数として不足し始めていて、賃上げを起こしやすい環境が出現しています。新卒の給与水準が驚異的な上昇を見せているのも需給と関係しています。