ただ弱点は、この動きが中小企業を含めると遅効性だということです。一部の大手上場企業ではすでに実質賃金がインフレを上回って上昇していますが、経済全体を示す厚生労働省の毎月勤労統計では現金給与の伸び率は4~7月平均で2.65%とインフレを下回ります。

 林候補はインフレ3%に対して実質賃金の1%上昇を定着させたいと主張しています。となれば中小零細を含めた現金給与の伸び率が4%水準で安定する必要があるわけで、実効性という意味では数年先にならないと実現できない話に思えます。行動力はある方だとは思いますが点数としては83点と厳しめに採点させてください。

 4番目が茂木候補です。先に個人の感想を述べさせていただくと、茂木候補の政策はこれまでの3候補と違って、今回の総裁選で1位になることを考えていないように感じます。そう感じる根拠が、物価高対策については即効性を捨てている点です。

 茂木候補は他の候補と違い、物価高対策について間接的なアプローチを表明しています。それが数兆円規模の新たな地方交付金制度を創設するという政策です。

 この新しい制度は自治体が自由に使える交付金になると茂木候補は説明します。これは理にかなった主張で、確かに「国民の生活が苦しい」といってもその状況は地方と大都市では違います。

 私は東京都の住民ですが、都や区ではここ数年、QRコード決済でポイントが還元されるキャンペーンや、区民限定のプレミアム商品券の発行などの経済政策が行われています。大資本ではない中小の小売店や飲食店で区民がお金を使うと実質10~20%の割引になるような政策です。都市部ではこういった住民政策は庶民の財布にやさしいうえに、中小の事業者も潤います。

 一方、地方で生活する人の場合、最大の関心事はガソリン価格でしょう。茂木候補はガソリンの暫定税率については即時廃止を主張しています。そのうえで自治体は交付金を地方創生財源に投入できることになります。バランスでいえば大都市よりも地方への交付のウェイトを増やすほうが生活支援の効果は高くなりそうです。