「え、どう返せばいいの…?」初対面で相手を困らせるNGワード集
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

「え、どう返せばいいの…?」初対面で相手を困らせるNGワード集Photo: Adobe Stock

初対面のNGワードとは?

 仕事やプライベートで、初対面の人に対してどう話すかは、それ以降の二人の関係を左右する。もちろん、良くも悪くもだ。

 そんな初対面のときは、自己紹介は避けて通れない。そして、自己紹介であまりいろいろと時間をとって話してしまうと、印象が悪くなる。初対面では、1メッセージでシンプルに自己紹介できるに越したことはない。

この自己紹介をどう思う?

 では、初対面の人に対して、次のように自己紹介したとする。印象はどうだろうか?

「地方を活性化させたいと思っていて、日々活動しております」

 特に変なことは言っていない。しかし、多くの人には印象に残らないのではないか。その場では覚えていられても、1週間後には忘れてしまうかもしれない。

 もっと言うと、そして、こちらの方が大事なのだが、忘れられてしまうだけではなく、その場での会話を少し難しくしてしまうかもしれない。

 言われた相手からすると、初対面なので場を持たせるためになにか雑談に持っていこうとするが、言われた内容に抽象的な言葉が多いので、そう言われてどう返すか、ちょっと考えてしまうからだ。

「大きな言葉」と呼ぶが、抽象的な言葉は、解釈が難しかったり、解釈の幅が広かったりして、相手を考えさせてしまいがちだ。

 結果として、初対面で会話するときには、「大きな言葉」を使って伝えると間が悪くなり、リズムが悪くなる。変な緊張も生まれる。

 初対面の自己紹介の1メッセージでは、抽象的な「大きな言葉」を使うのは、避けられるなら避けた方がよい。

初対面のときこそ、「小さな言葉」を使おう

 では、どうするとよいか。コンサルでも経営者でも、人から信頼を得ることが生業の「初対面上手な人」が自己紹介でこっそりやっているのは、自己紹介の1メッセージで「小さな言葉」を使うことだ。

「小さな言葉」とは、その言おうとした抽象的な「大きな言葉」の下位概念の言葉だ。より小さな言葉を選んでいくと、最後は固有名詞や数字になっていく。

 たとえば、「初対面上手な人」であったら、さきほどの自己紹介を次のように「小さな言葉」に変えて伝える。

「松山市の観光客を増やすために、松山城の紹介を週5回はインスタに投稿していたりします」

 さきほどの「地方の活性化」だと、いろいろな地方のいろいろな活性化を含んでしまってぼんやりしてしまう。

 そこで、一番力を入れていたり、象徴的な事例だったりするものを一つ選んで「松山市の観光客を増やす」と固有名詞まで落とした下位の「小さな言葉」で伝える。これで、相手が迷わずに具体をイメージできる生々しい言葉になる。

 同じように、「日々活動」だと、いろいろな行動を含んでしまってぼんやりしてしまう。このため、「松山城の紹介を週5回インスタに投稿」と、下位で具体の固有名詞や数字を使って「小さな言葉」で伝えることで、こちらも相手が迷わず具体をイメージできるようになり、伝わりやすくなる。

会話がとぎれず、弾む!

 自己紹介が相手に一瞬で伝わると、相手はそれに対して言葉をすぐに返しやすくなる。

「松山市ということは、愛媛ご出身なのですか?」
「わたしも松山城は10年ほど前に旅行で行ったことがあります、懐かしい」
「一つのお城について、週5回もインスタに投稿を続けるなんて、どんな工夫をされているのですか」

 このように、相手が言葉をすぐに返せるようにすると、間がよくなり、それが、会話のテンポのよさにつながっていく。最終的には、相手にとって「あ、この人は話しやすいな」という印象の良さにつながる。

 お互いのフィーリングがまだ掴めていない初対面では、会話の間やテンポをよくしてくれる自己紹介が求められる。

「初対面上手」は、固有名詞や数字などの「小さな言葉」を使ってシンプルな1メッセージで伝え、会話の間やテンポをよくする工夫をしている。

 1メッセージとは、シンプルな一文だが、工夫をしないと単なる短いだけの相手に伝わりにくい、意味のない一文になってしまう。よくできた工夫された1メッセージは、相手に生々しく伝わり、相手を動かしていく。

 1メッセージの技術とは、たった一文で、相手との関係を縮める技術でもあるのだ。

(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)