ある1つのメロディをつくるということに関しては、実際にはそれほどAIに優位な点はないように思います。というのも、作詞や編曲の作業というのは(とくに編曲に顕著ですが)、その制作過程にある程度の時間を要しますが、メロディというのはそうではないからです。
「いや、そんなことはない。メロディだって悩んで出てくるだろう」と思うかもしれません。しかし実際のところ、あるメロディを「思いついている」のは、そのメロディが実際に奏でられる時間より短い時間に過ぎません。それは作曲をする方なら容易にイメージできるところかと思います。
実際みなさんも、とにかく適当でもよいので何か鼻歌を歌ってみてといわれたら、一応メロディらしきものが出てくるのではないでしょうか?
プロの作曲課程で重要な
良いメロディ選びがAIにはできない
このように、「とりあえず形になるかどうか」という点では、「作曲」ということそのものは、「作詞」「編曲」に比べると、それほどAIの優位性というのは存在しません。
むしろAIは複数のメロディを提案することを得意としています。もちろん人間にもそのようなことはできますが、どうしても作り手の好みが出るので、ある人がつくったいくつかのメロディには、結局何らかのプライオリティが存在するでしょう。
私もよく作曲家の仕事をしていて「サビを何パターンか聞かせてほしい」というようなオーダーを受けることがあります。
たしかに、つくれないことはないのですが、実際にA、B、Cと3パターンつくったとして「自分がいいと思うのは正直Aだな」というふうになります。作曲家にとって、メロディをいくつもつくること自体はそれほど難しくありませんが、「良いメロディ」というのがつくれるからプロなのであって、自分の考えたものの中にその優劣が見出せなければ逆に仕事にするのは難しいでしょう。







