「あの話とはなんなんじゃいったい」
松野家は傅(堤真一)に謝りにいく。
「親が子の足を引っ張ってはいかん」と注意され、勘右衛門は「腹を切る覚悟はできております」と言うが、「いわゆる武士らしさのようなものが破談につながったことは自覚してほしい」とさらに釘を刺される。腹を切るなんてことも含めて武士らしさが明治には求められていない。
再度、お見合い相手を探すが「雨清水様にお願いすることはないと」とフミはちらっとタエ(北川景子)を見たような。タエはタエで「次は何を塗られるかわかりませんし」と対抗する。静かに怖いフミとタエの闘い?
すると傅はトキだけ残して3人は外すように促し、召使いが襖をすっと開ける。
不安になる司之介は傅に尋ねる。
「あの あの いったいどけな話を」
「あの話ではございませんでしょうな」
「なんじゃあの話とは」
「あの話はあの話でございます」
「だからどのあの話じゃそのあの話とは」
「そのあの話はあの」
「あのあの話?」
「あのあの話でございます」
「あのあの話ですよ」
「あのあの話でございます」
「ああ あのあの話か あのあの話」
「どのあの話を」
「あのあの話だけは」
「あのあの話ではない」
「あの話とはなんなんじゃいったい」
フミやタエも交えて「あのあの話」が連なっていく。いったい何回「あの」が出てきたのか。俳優たちも混乱したのではないだろうか。
ちなみに、SEO(検索エンジン最適化)ライティングでは「あの」「その」「あれ」「これ」という“こそあど言葉”は使用を避けたほうが良いと言われている。つまりこれはネットメディアへの挑戦とも考えられるのではないか。記事のタイトルに「あのあの話」がたぶん使いづらいからだ。
ああ愉快痛快。久しぶりに朝ドラでおもしろい会話劇を見た気がする。こういうのが見たかったという視聴者もいるだろう。筆者は少なくともそうだ。
第7回の「無類の○○好き」もよかった。ただ、毎シーズン、人を食ったような会話劇だらけであってほしいとは思うわけではない。たまにこういうのがあるとうれしい。
それにしても「あの話」とは何なのだろう。「あのあの」でその疑問が飛んでしまった。もしかしたら、司之介や傅たちはトキに「あの話」に対する疑問を感じさせないようにみんなで頑張ったのかもしれない。あの「あの話」とはいったい。
