実務文に必要なのは
「斜め読み耐性」を持たせること
文章には芸術文と実務文があります。芸術文と実務文とでは、そもそも用途が違います。しかし用途以外にも、とりわけ大きな違いが1つあります。
芸術文は、読み手が全文を必ず読んでくれるという前提で書くことができます。芸術文は味わうもので、最後まで読まなければ、「いったい何が言いたいんだろう?」の答えが分からないままでもよいのです。
しかし実務文は、全文を必ず読んでくれるという前提で書いてはいけません。斜め読みされたり、読むことを中途放棄されたりすることをも織り込み済みにする必要があります。実務文は、たとえ斜め読みされても書き手の意図が伝わらなければならないからです。
工業製品では、高い温度、水分、また強い衝撃にも耐えられるように設計すれば、頑強な製品になります。うっかり、濡れた手で操作しても、誤って床に落としても、問題なく働き続けてくれるでしょう。
同じように、文章の品質でも「文章強度」のような考え方が必要です。それを私は「斜め読み耐性」と呼んでいます。
斜め読み耐性を持つ文章は頑丈で、たとえ乱暴に斜め読みされても、情報を伝えるという役割は何とか果たしてくれる文章です。しかし世の中の多くの文章は斜め読み耐性を持たないので、すぐに潰れてしまい、使命を果たすことなく捨てられてしまうのです。
もちろん、斜め読みや中途放棄されない工夫も重要です。そのためには、読み手に一時でも「いったい何が言いたいんだろう?」という疑問を持たせてはいけません。ましてや文章の最後までこの疑問を持たせ続けることなど、実務文としては最悪です。
「同意を求める文章」と
「同意を求めない文章」
世間にはいろいろな実務文があります。新聞記事のような事実を伝える文章。取扱説明書のような操作方法を教える文章。新聞の読者投稿のような意見、主張を伝える文章。SNSなどで意見を表明する文章。論文のような研究成果を伝える文章。友達どうしが飲み会に誘うLINEのメッセージ。自社製品の優秀性を訴え、購入を勧誘する広告文。新しい事業計画を説明する企画文書。







