――以上、いろいろありましたが、よくよく考えてみると、実務文は2種類に分けられます。それは「同意を求める文章」と「同意を求めない文章」です。

 巧みな「同意を求める文章」を読んだ人は、書かれてある内容に同意し、書き手と同じ意見になります。つまり、書き手に「説得された」ことになります。よい広告文を読んだ消費者は、その製品の優秀性に関して、書き手に説得され、その商品を買いたくなるでしょう。新製品のアイデアの企画書がよければ、役員会議でその製品開発が承諾されるでしょう。

 一方「同意を求めない文章」では、読み手は書かれている内容を正しく理解できればよいわけです。たとえば新聞記事で、ある高速道路での大事故を報道した場合、読者を「説得」したりする必要はありません。事故の様子をよく理解してもらえればよいのです。取扱説明書も操作方法を伝えているだけで、読み手を説得したり、読み手に同意を求めたりはしません。

 つまり、成功する文章には2種類あることが分かります。

「同意を求めない文章」が成功するには、書き手の「意図の正しい伝達」だけでよいことになります。しかし「同意を求める文章」が成功するには、これに加えて、「説得での成功」も必要になります。

 文章を書くとき、それが芸術文なのか実務文なのか、また、実務文なら、「同意を求めない文章」なのか「同意を求める文章」なのかを意識することが必要です。文章のタイプを意識して書くのと何も考えずに書くのとでは、できあがりに大きな差が出てきます。