男子校と女子校、「楽しさの正体」はまるで別物
別学の魅力を考える際、注目したいのが数の問題です。定員200人の共学校では、基本的に100人ずつが男女に分かれます。しかし男子校なら当然ながら、200人全員が男子、女子校なら200人全員が女子です。
この人数の違いがもっとも顕著に現れるのが、部活動や行事の盛り上がり具合です。
たとえば、1学年200人の共学では、100人の男子がいろいろな部活に分かれて入部するため、ひとつの部活に入って来る男子の人数は少なくなります。人数が多くなければ成立しない、サッカー部や野球部は人集めに苦労することになるかもしれません。
しかし200人の男子校なら、たとえば、野球部やサッカー部に入る人数は単純計算で倍になり、部活動も盛り上がりやすくなります。これは女子の部活動でも同じで、女子に人気の吹奏楽部やダンス部なども、同性のみの学校では人数を集めやすく、活動が充実する傾向があります。
そして、そもそも学校選びで重要なのは、子どもがその学校に通うのが楽しいと思えるかどうかに尽きるのですが、男子校と女子校では、楽しさの源泉が異なります。
これはあくまでさまざまな学校の傾向を見た話ですが、男子の教育はソフト面から入った方がうまくいきやすいのに対し、女子校ではハード面を充実させると、楽しさを感じやすいようです。
ハードとは、トイレがどれだけ綺麗で過ごしやすいかや、校舎のあり方がいかに居心地のよいものか、といった物理的な環境を指します。人気のある女子校は、思春期の女子が自分の学校を好きになり、学校に対して誇りを持てるような学校環境づくりを大切にしています。
山脇学園の新しい校舎、恵泉の図書館、豊島岡女子のシンデレラ階段、東洋英和の講堂、桜蔭の温水プールなどのハードは日本でも有数です。
制服もそのひとつでしょう。人気校は、「この制服を着たい」と思わせるデザインをはじめ、動きやすさ、気候によるアレンジのしやすさ、安全面などさまざまな工夫を凝らしています。形から入るという効果は確実にあります。
一方、男子校では、多少、校舎や部活の部屋が整っていなくても、そこまで気にしない子が多いため、どちらかというとソフト面、つまり先生との関係性や指導方法に重点を置く傾向があります。男子の方が物理的な環境への要求水準が相対的に低く、ソフト面の充実で学校に対する満足感を得やすくしているのです。