「日本の鉄の女」高市早苗氏が信奉…サッチャー元英首相の即断即決を支えた“聞く力”の重要性
【悩んだら歴史に相談せよ!】続々重版で好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。

「知らないことに向き合い、即断した」
サッチャーの覚悟と責任
青天の霹靂、南大西洋の危機
1982年4月、サッチャー政権にとって予期せぬ国家的危機が訪れます。南大西洋に浮かぶイギリス領・フォークランド諸島に、突如としてアルゼンチン軍が侵攻してきたのです。
この事態は、政権の命運を大きく左右する一大局面となりました。
揺れる領有権と独裁政権の野望
フォークランド諸島は、1833年以来イギリスの統治下にありましたが、時代は脱植民地化の潮流。政府内では、アルゼンチンとの共同統治や返還の可能性も検討され始めていました。
一方で、アルゼンチンでは軍事独裁政権が支配を強めており、国内の経済危機から国民の不満をそらすため、突如として軍事侵攻という暴挙に出たのです。
渦巻く悲観論と揺るがぬ決意
侵攻の一報を受けたサッチャー政権内では、防衛は現実的ではないのではないかという悲観的な声も上がりました。当時、サッチャーはまだ国防経験に乏しく、政権支持率も低迷していたため、政権内部の空気は決して楽観的ではありませんでした。
しかし、サッチャーは迷いなく反論します。「もし侵略されれば、必ずとり返さなければならない」これは彼女の回想録に記された言葉です。そこには、リーダーとしての決断と責任がにじんでいました。
専門家の進言と即断即決
サッチャーは、軍事知識に乏しいことを自覚していました。だからこそ、判断を下す前に信頼できる専門家に意見を求めます。
相談を受けたのは、海軍参謀長ヘンリー・リーチ。彼は、明確に答えました。「2隻の空母を中心に、駆逐艦・巡洋艦・揚陸艦からなる艦隊を展開すれば、奪還は可能です」
この提案に、サッチャーは即座にゴーサインを出します。その場で作戦艦隊(タスクフォース)の編成と出動を許可し、イギリス海軍は直ちに行動を開始しました。
「鉄の女」のリーダーシップ
リーダーの資質とは、「知らないことに向き合い、判断を下すこと」ともいえます。ここでのサッチャーの決断は、彼女のリーダーシップの本質を示しています。
●専門家の意見に耳を傾け、その知見を尊重する
●リスクを恐れず、国民のために「やるべきこと」を即断する
「鉄の女」と呼ばれたゆえんは、その強さだけでなく、迷ったときに人に頼りながらも、最後の責任を引き受ける覚悟にあったのです。