なんで司之介と傅は“永遠の宿敵”なの?おトキの「おじさまが父上だったら良かったのに」が純粋すぎてツラい〈ばけばけ第13回〉

朝、昼、晩と傅の看病に勤しむトキ

 トキが看病に行く朝、「いってらっしゃい」とフミは明るく振る舞う。でもやっぱり心配な様子。

 トキは工場へ出勤する前に看病へ。若くて体力がありそうだからいまのところは大丈夫だろうけれど。まあでもフミの心配は体力的な問題ではなさそうだ。

 トキはまず、朝ごはんをタエに食べさせて、それから傅の寝室へ。

 いつもトキが「おじさまが父上だったらよかったのに」と言ってるから、司之介が嫉妬して傅を「宿敵」視していると聞いて、傅は複雑な顔になる。

 いやもう、明らかに、「あの話」は「この話」なんだろうなあと思う。トキの父上と母上は誰かという話だろう。いかんいかん、つい口にしてしまった。ドラマがある狙いをもって引っ張っているのだから、見ているほうも忍耐しないといけない。サプライズパーティに薄々気づいていても気づかないフリをする。それが武士の情けである。

 三之丞は「父は母を甘やかし、私にはなにひとつ教えてくれなかった」とこれまでを振り返る。武士の家とは何か。武士には武士の、武士の妻には妻の、武士の長男その他にはそれなりの役割があるようだ。現代人の感覚ではわからないが、王室とか皇室とか伝統芸能のお家とかには独特のルールがあるのだろう。

 武士の時代であればたとえ何も知らなくても三男坊もそれなりに生きていけたのかもしれないが、武士のブランドもなくなって、急に工場を任されても、何もできない。また反物に傷が入っていて、やり直せと女工に怒っている平井(足立智充)を三之丞は見ないふりをする。

 何も知らないからといって、この横暴を止めようと考えないところは、三之丞も三之丞だなと思うが、追い込まれてしまって何もできないのだろう。三之丞にはネガティブな気持ちがわかないほど、彼は同情したくなるように描かれている。

 トキは工場で働きながら、朝・昼・晩と雨清水家に通う。

 夜、『鳥取の布団』を傅に語り聞かせたトキに、「婿殿は切ない話を、心根の優しい男なんじゃろう」「人生とはうらめしいものじゃ」としんみりする傅。

 いや、ほんとに、『鳥取の布団』は『フランダースの犬』みたいな後味のある話である。

 近年、悲しすぎる話は見たくないという声が増えて、ドラマではしんどいものや悲しい描写を薄口、あるいは省く配慮がされてきた。朝ドラでも、姑の嫁いびりがなくなり、困難に遭って苦しむ描写は減った。

 だが、そもそも悲しい話には意味があった。それは何か。