「二度と母親の顔は見せるまいと誓ったのに…」 タエ(北川景子)の“隠していた真実”を知った三之丞(板垣李光人)の後ろ姿が切ない〈ばけばけ第14回〉

一向に良くならない傅

 トキと傅がほっこりしている一方、工場では「一日一反」のノルマがますます厳しくなっている。

 平井(足立智充)は馬のむちを振り回しはじめた。

 姑いびりはないが番頭いびりがあった。平井のハラスメントは甚だしく、ご不浄にもいかせてもらえない。

「社長様に言ってよ」「早く治して」と女工たちはトキに頼む。

「そげなこと……」できるわけないとトキは困惑するが、やっぱりトキと傅の仲の良さは周囲にへんなうわさになっていそう。親戚だといっても工場でひとりだけ特別扱いなのは、状況がいいときは見過ごせても、状況が悪くなってくると寛容になれなくなるのが人情だ。

 ご不浄にも行かせてもらえないくらいなのだから、昼休憩も潤沢に取れないのではないか。とすると昼休憩に看病に行っている場合か、という気持ちになる女工がいてもおかしくないかも。

 トキはトキで工場の仕事のほかに朝、昼、晩と看病しているので、疲労困憊(こんぱい)。

 台所でうっかりしじみを落としてしまい、拾おうとして手にケガをしてしまう。

 タエが代わって拾う。

「しじみくらい拾えます」と意地っ張り。箸より重いものを持ったことがないという言葉は本当にあるようだ。

 今度はタエとの温かい交流が始まる。

 しじみ汁の作り方をトキがタエに教えるのだ。

「洗う? 洗う……」と、第2話の「工場、工場……」と同じようなニュアンスで知らない概念を口にするタエ。

 洗い方は「コロコロ」。

「すばらしいコロコロでございます」とトキは褒める。

 トキが教えていることはおそらく、フミから習ったことだ。第2週、新婚の朝、料理を教わっていた。

 みそ汁のみその分量を「椿の花くらい」、溶き方を「お茶をたてるときのように」と例えるなど、独自の表現のセンスがいい。

 タエがはじめて炊事をしたとき、火が轟々と燃えていたが、いまはかまどの火がやさしく燃えている。まるで、タエとトキの心のように。