三之丞が不憫過ぎる
タエは家事をやったことがないながら、ポテンシャルはあるようで(武家の娘のたしなみは一通りやっているから、やり方やコツを覚えたら家事もできるのだと思う)、教わったことはちゃんとできる。ついうれしくなって、慌てて抑える仕草がほほ笑ましい。
傅とトキの関係はあやしいが、タエとトキの関係は良好で、先週来の「あの話」とは「あの話」しかないだろうと思う。
そしてついに真実を言葉に出すタエ。
「二度と母親の顔は見せるまいと誓ったのに」
生まれたばかりのトキを松野家に養子に出したのだ。
「親子として振る舞える。そんな日がいつかくることをわしは願っておる」と傅。
ということは、しぶしぶ松野家に養子に出したのだろうか。
「傅、長生きするんですよ」とタエ。いま傅の生きる力を支えるのはトキの存在。トキといつか親子のように振る舞う日を夢見て、病に打ち勝ってほしい。
この重大な話を聞いている者がいた。
三之丞(板垣李光人)だ。大福帳みたいなものを手にしているから仕事のことで教わりたいことがあったのかもしれない。でも、衝撃の秘密を聞いてしまっては、もう傅の部屋には入れない。そっと引き返す。その後ろ姿が切ない。法被の背中に大きな「雨」の文字が、家の重さと、三之丞の悲しみの深さを感じさせた。
銀二郎も秘密を聞いてしまい、三之丞も聞いてしまった。やっぱりこのふたり、少しだけ似た、「息子はつらいよ」的な境遇にあるようだ。
何も知らないトキは、家でしじみ汁を飲んで「あー」と嘆息し、慌ててやめる。ところが、今日は司之介が「あー」を許してくれた。
実の父母の複雑な心境を知ってか知らずか、松野家はものすごーく幸せそう。
貧しいけど楽しかったり、幸せそうなのに胸が締め付けられたり、糾える縄のごとし。
