もちろん親が、自分の過去にあった成功や失敗をふまえてアドバイスができるという良い面もありますが、得てして子どもは「自分のやりたいこと」ができなくなるケースが多い。

 ですから子どもの好きなことを伸ばすとしたら、自主性を育み、本人が集中してそれに取り組めるようになったら余計なアドバイスをしない。子どもが何か尋ねてきた時にだけ答えればいいのです。

大人の全面協力が
有望な子の足を引っ張る

 特に能力のある子ほど、技術面では大人の手を加える必要がないですね。藤井七冠がまさにそうで、ほっといても伸びるといいますか、邪魔をしなければ伸びる。実は周囲は全面協力しているつもりでいて、有望な子の邪魔をしている例はすごくよくあるのです。

 例えば将棋ではプロを目指している優秀な子に、過去の経験者が徹底的に教え込むことがあります。でも本来は、いろんなものを体験させてあげたほうが本人の力が伸びるのです。経験者の得意技を教え込むことで、「小型の経験者」ができあがってしまいます。

 邪魔しようと思って邪魔している人はいないので何とも悲しいことなのですが……。協力しているつもりで足を引っ張っているんですね。

うまくいかずに自信を失っている子には
褒めて自信を持たせる

 大人や年長者が、子どもや若い人の才能を伸ばすためにできることは、その子の答えを引き出すこと。そしてなかなか勝てない、また何かがうまくいかずに自信を失っている時に褒めること。

 私は公式戦で連続して勝っていた時期に、弟子と将棋をして「いや勉強になったよ」とか「最近指した相手の中で一番手強かったよ」なんて言うと、彼らもすごくうれしそうな顔をします。それは私の対戦相手にとっては失礼な話なのですが、聞こえない話ですからいいのです(笑)。

 また普段は口が重い弟子でも、メールでは言いやすいのか、自分が思っていることを細かく書いてくるケースがよくあります。ですから顔を合わせた時は褒めて自信を持たせ、メールでは具体的な将棋のアドバイスをするというのも“いい手”だと思います。

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