「モンテッソーリ教育」と聞くと、個性的な「天才を育てる教育」と思っている人も多いかもしれない。実際モンテッソーリ教育はスティーブ・ジョブズや藤井聡太名人など数々の天才を輩出しているが、その教育の真髄は別のところにあるようだ。モンテッソーリ教育が子どもに与える影響とは?本稿は、島村華子『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス』(創元社)の一部を抜粋・編集したものです。
世界154カ国で採用
モンテッソーリ教育とは?
1907年にマリア・モンテッソーリ医師が、ローマに初めて「カサ・デ・バンビーニ(Casa dei Bambini):子どもの家」を設立してから、モンテッソーリ教育は世界中に広まってきました(1)。
現在、モンテッソーリ教育は世界154カ国で取り入れられています(2)。自立心を育み、子どもの内なる能力を引き出すことを大切にしながら、子どもの包括的な発達を促進するというその教育理念は、従来の教育システムとは大きく異なり、オルタナティブ教育(非伝統的教育*1)の一つとして人気があります。
現在、モンテッソーリ教育に関わるいろいろな監督機関がありますが、マリア・モンテッソーリ医師自身によって設立された国際モンテッソーリ協会(Association Montessori Internationale: AMI)やアメリカで大きな影響力を持つアメリカ・モンテッソーリ協会(American Montessori Society: AMS)が中心となって、モンテッソーリ教育の質保障や教師トレーニングを提供しています。
歴史的に伝統的な教育システムは、子どもを「空っぽの器」「白紙の状態」と捉えてきました。
子どもは特定の知識や能力を持たず、受動的な学習者であるからこそ、詰め込み式の教育によって子どもを形成していくのが学校の役割であるという考えです。
これに比べて、モンテッソーリ教育は、子どもたちは生まれながら好奇心、学習欲、才能、自立心にあふれた存在であり、自ら知識を構築できる有能な学習者であると捉えています。また、市民として社会、大きく言えば平和に貢献できるコミュニティーには欠かせない一員だと考えています。
こういった考え方は、「平和教育」と呼ばれ、モンテッソーリ教育理念の土台となっています。
「従来の教育システムに不適応」?
批判より本来の意味を考えるべき
モンテッソーリの学校では、従来の教育システムに存在するようなテストや評価がないほか、自己学習ならびに協働学習が中心のため、子どもがモンテッソーリでない学校に進学した際に適応しにくいという批判があります。
*1 文科省が定めた学校外での教育のことを指す。
(1) Whitescarver, K. & Cossentino, J. (2008). Montessori and the mainstream: A century of reform on the margins. Teachers College Record, 110(12), 2571-2600.
(2) Debs, M. C., de Brouwer, J., Murray, A. K., Lawrence, L., Tyne, M., & von der Wehl,C. (2022).Global Diffusion of Montessori Schools: A Report from the 2022 Global Montessori Census. Journal of Montessori Research, 3rd edition, 8(2), 1-15.