本題(2)合意退職書の提示

「今日辞めていただけるのでしたら、こういう条件も含めて辞めていただけるように考えています」

 そのように言って「合意退職の書面」に記載されている条件を見せます。

 ここは、問題社員の感情が一番高ぶるところだと思います。さすがに、退職まで打診されるとは思っていないのでしょう。

 しかも、「今日会社を辞めろ」と突然言われるのです。怒りやショック、悲しみ、人によって反応は違いますが、「何で私が……」と言いながら、泣く人もいます。

 しかし、交渉する側(私たち)はできる限りそういった感情に引きずられないようにしましょう。

動揺が落ち着くまで待つのは
裁判を回避するために重要

本題(3)問題社員が落ち着くまで待つ
 

 問題社員が動揺して泣いてしまった。その状態で、合意退職の書面にハンコを押してもらい、トントン拍子に手続きを進めてしまったら、後々、何を言われるかわかりません。


「あの時は動揺していた」「無理やり合意させられた」「強迫された」そんなふうに言われて、裁判を起こされるかもしれません。


 ですので、問題社員が動揺している時は、急がずに時間をかけましょう。問題社員が落ち着くまで1時間ぐらい待つこともあります。


 その間、私は独り言のように喋り続けることもあります。何を話すのかと言いますと、「社長としても、今まで働いてくれた恩があるし、感謝の念もあるから、解雇といった形にして、揉めたいとは思っていないです」


「もちろん、会社の都合を第1に考えての提案ではありますが、次の再就職にも影響が出ると思うので、できればここは円満に合意退職という形で辞めてもらったほうが、あなたの人生にとってもいいのではないかと真摯に考えています」


「正直、他の従業員とこれだけ揉めていて、これだけの問題を起こしておいて、このまま働き続けるというのは会社としてもあなたとしてもなかなか厳しいと思っています」


 問題社員は動揺しているので、聞いているか聞いていないかわかりません。もちろん、本当に思っているからこそ話していることでもあります。


 ただ、録音していることもあり、強迫していないことと、問題社員に寄り添っていることを、残すためのものでもあります。