この時、言い方は優しく丁寧ですが、言っている側からはおそらく尋常ではない圧が出ていると思います。

 その様子を見て、ここで折れる人は多いです。

 ほとんどの問題社員は、「明日から来るな」とか、「今すぐ全部置いていってくれ」などと言われるとは思っていないのだと思います。自ら「クビにしたらいいじゃないですか」と言ったにもかかわらず、です。

 さらに、「解雇通知書」まで用意しているとは思っていないのでしょう。

「話を聞かせてもらえませんか?」「一緒に条文を確認してもらえませんか?」そんなお願いベースの言葉と態度にすがって、ここで泣きつけば、まだなんとかなる、解雇はできないのだろうと思っている人がほとんどなのです。

 ここで初めて「自分の立場が危ない」ということに本気で気がつくのでしょう。

問題社員の時間稼ぎには
毅然とした態度で対応を

本題(5)取りつく島を与えない


 ここからの流れで、想定できるのは、


「せめてパソコンの中身を整理してもいいですか?」


「私物を処理してもいいですか」と言われることです。


 しかし、そもそも会社の備品ですし、人に見られてはいけないような私物を会社に持ち込んではいけないのです。ここで、パソコンから会社の情報をコピーして持っていこうとする人もいるので、毅然とした態度で臨みましょう。
 

 はっきりと、「あなたが整理する必要はないから一切触らないでください」と言いましょう。おそらく時間稼ぎをして、なんとか取り戻すチャンスはないか、動転して発言しているだけであることが多いです。


 1ミリたりともスキを与える必要はありません。

 すると、今度はものすごい絶望に変わり、「どうしてですか……?」と聞いてきます。「どうしてですか?」そのように聞かれても、ブレずにこれまでと同じ態度をつらぬいてください。

本題(6)円満退職へのダメ押し

 

「我々としても解雇したかったわけではないけれども、あなたが事情も説明してくれないし、説明してくれても、我々が別の従業員にヒアリングしている客観的な証拠と違うことをおっしゃるので、我々としては今ある手元の証拠、証言をもとに客観的に判断せざるを得ない」

 

「ただ、あなたは会社に貢献してくれたと思うので、なるべく円満にと思い、合意退職の道も示したけど、それもあなたが自らの意思で応じないと言いました。ですから、我々もこういう結論を出すしかなかったのです」