
中国の新興EVメーカーBYDが自動車業界を席巻している。航空機でも中国産旅客機「COMAC」が台頭し始めている。日本の航空機製造は三菱スペースジェットを断念した一方、COMACは米ボーイングと仏エアバスの牙城を崩そうと奮闘中だ。日本の航空ファンは、中国機の動向を注視するしかないのか。本稿では、COMACの戦略と実績、将来性を追う。(航空ジャーナリスト 北島幸司)
中国産旅客機「COMAC」は
“飛行機のBYD”になれる?
自動車業界では中国のEV(電気自動車)メーカーBYDが登場し、いつの間にか世界市場でシェアを拡大している。翻って航空機の業界ではCOMAC(Commercial Aircraft Corporation of China, Ltd.=中国商用飛機集団有限公司、2005年設立)が台頭し始めているのを知っているだろうか。
航空機の業界は、米ボーイングと仏エアバスが二大巨頭である。世界市場において、COMACがその牙城を崩す可能性を考察してみた。まず、開発中のものも含む3タイプの旅客機の詳細を確認しよう。

COMACは3つの機種で、短距離から長距離まで航空市場全域をカバーする戦略を推し進めている。「C909」(旧称ARJ21)は、中国初の小型国産ジェット旅客機で、16年に商用飛行を開始。座席数100席以下の地域間輸送で実績を積み、23年には累計輸送旅客数1000万人を達成した。
「C919」は、エアバスA320やボーイング737といった売れ筋がひしめくナローボディ機市場に参入した機種だ。23年に商用飛行を開始し、24年末には累計輸送旅客数100万人を達成。C909とC919は、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空といった国際線を持つ大手エアラインでも使用されている。知らず知らずのうちに乗っている日本人もいるだろう。