ある程度観察会や同定会に参加し、自宅でキノコ図鑑を見て学んだからといって、すぐに一人で山へ入るのは危険だ。誤って毒キノコを採取する可能性があるだけでなく、遭難や道迷いの可能性、スズメバチ、マダニ、毒ヘビなどの生物リスク、場所によってはクマの被害もある。観察会などに参加して、専門家やベテランと一緒に出掛けるのが安全だ。

「カラフルなものには毒」「縦に裂ければOK」…
迷信や言い伝えは本当か

誤った知識が命取りに…知らないと怖い「毒キノコ」にまつわる迷信【猛毒種リスト付き】折原貴道さん。講師を務めるキノコの観察会が人気 写真提供:本人

 一説によると、日本では約4000年前の縄文時代からキノコが食べられてきたといわれている。そんなふうに人々の暮らしに身近な存在であったがゆえか、キノコに関する迷信や言い伝えは枚挙にいとまがない。

 これらにはどの程度信憑性があるのだろうか。

「よく聞かれるものに、縦に裂けるキノコは食べられるとか、虫や動物が食べているキノコは安全、カラフルなキノコには毒がある等がありますが、これらはすべて迷信です」

 ほとんどのキノコの軸は縦に裂けやすく、毒キノコも例外ではないため、食べられるかどうかの指針にはならない。

 また、虫や動物の代謝の仕組みは人間とは異なるため、彼らが食べられるものが人間にとって安全とは限らない。

 カラフルなキノコの中にも食べられるものはあるし、地味な色のキノコにも有毒なものがあり、色と毒性に関係はない。

 このほか、マツタケやトリュフなど、香りがよいものは食べられるとか、ナスと一緒に煮ると毒が抜けるなども間違いだ。キノコを見極めるには、確かな知識と経験が欠かせないのである。