
秋の深まりとともにキノコのおいしい季節がやってくる。自然を愛でながら収穫もできるキノコ狩りは、秋の行楽にぴったりのレジャーだ。しかし、毎年耳にするのが「毒キノコによる食中毒」のニュース。中には後遺症が残ったり、重篤な場合は死に至ったりするケースもある。被害に遭わないための基礎知識を、専門家に聞いた。(取材・文/フリーライター 楠本知子)
日本には7000種類のキノコ
食べられるのはどのくらい?
「『キノコ狩りに行ってみたい』と思っても、いきなり一人で山へ出かけるのではなく、まずは充分に知識と経験を積んだ人に案内してもらうか、各地の自然公園や博物館やキノコ同好会などが開催している観察会や同定会などに参加することから始めてください」
そう話すのは、神奈川県立生命の星・地球博物館主任学芸員の折原貴道さんだ。
「日本には約7000種類の名前の付いたキノコが存在しますが、名前のついていないキノコはさらに多く、その中で食べられるキノコは数百種類程度。大半は食用にも毒にもなりません。まずは、食べられるキノコを探す前に、キノコについての基礎的な知識を学ぶことが大切です」
自宅でできる準備としては、図鑑での学習がある。書店に並ぶキノコ図鑑はまさに玉石混交で、なかには誤った名前や知識が載っているものもある。ひとつの図鑑だけを信じ込まず、複数の資料を見比べて、写真の多いものを選ぶのがおすすめだ。
「特徴や発生時期、発生環境などの情報が詳しく書かれているものがよいでしょう。博物館や大学の専門家が執筆もしくは監修したものがおすすめです」